3つ目の「チャイナリスク」はどうだろうか。いわゆる地政学は筆者の専門とするところではないのだが、2022年2月に北京で行われる冬期オリンピックが終わったあとの大陸中国と台湾の関係が心配だ。
素人目にも、ロシアとウクライナの軍事的衝突と、台湾海峡の軍事衝突が同時に起こった場合に、アメリカが両方にうまく対処できるようには思えない。加えて、核開発のスピードを速めるイランをめぐって、中東地域でも緊張が高まるかも知れない。
2021年は、アメリカの内外両面における劣化が目についた1年だった。年初には、ドナルド・トランプ前大統領の支持者による議会乱入事件が起きた。自然発生した偶発的事件であるにせよ、誰かが裏で画策したにせよ、あのようなことが起こるアメリカ社会の分断と脆弱性は深刻だ。
また、ジョー・バイデン大統領に政権が交代したあとのアフガン撤退における大失敗は、アメリカが今や軍事的にも盤石ではないことを可視化した。「台湾有事」が起こった場合、「それはアメリカと日本の両方にとって有事だ」と口では言えるとしても、具体的に何ができるかは問題だ。結局は「非難」と「経済制裁」くらいしか日米にできることはないかもしれない。
アメリカに全面的に頼るだけでは日本の防衛は不十分
何も、中国と直接的な武力衝突を起こすことのほうが望ましいと言いたいわけではない。ただ、おそらくアメリカに全面的に頼るだけでは、日本の防衛にとって不十分であるかもしれない現実を直視すべき時期に来ているではないか。
ただ、投資家にとって台湾有事の評価は微妙だ。一般的に株式市場では「近くの戦争は売り、遠くの戦争は買い」と言われる。緊迫した事態が起こった場合、株価はいったん大きく下がるだろう。
一方、武力的な衝突が何らかの膠着状態を迎えた場合、各種の防衛的ニーズは日本の産業にとっての需要を生み出す可能性があるし、米中の分断が進むと、現在中国が担っているグローバルなサプライチェーンに対するニーズの一部を日本が肩代わりするような事態の進展も想像しうる。新しい冷戦が冷戦にとどまるかぎり、こと経済にとっては悪い話ばかりではない可能性がある。
ただし、貿易で見た日本経済との数量的な結びつきは、現在、中国との関係のほうがアメリカとの関係よりも大きい。中国との関係悪化が起こると、大きなダメージを被る日本企業は少なくあるまい。いずれにせよ、アメリカがすでに「全面的に頼れる親分」ではないことを、日本人はそろそろ現実の問題として認識する必要があるのではないか。
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