次は「パウエルリスク」だ。12月18日配信の本連載「2022年はいよいよ『深刻な危機』がやってきそうだ」で、オバゼキ先生(小幡績・慶應義塾大学准教授)が、巷間報じられているように、FRB(連邦準備制度理事会)が2022年「3度の利上げを予定している」わけではないことを丁寧に解説してくれたが、FRBが金融緩和の撤収とインフレ対策としての利上げに、かつてよりもずいぶん「前向き」であることは事実だ。
オミクロン株より数段怖い「パウエル議長」
ジェローム・パウエルFRB議長は先般、新しい議長の任期を得た。今後は評判をそれほど気にせずに、「インフレを抑えた」というセントラルバンカーらしい実績づくりに意気込む可能性がある。
もともとコロナ禍の前からアメリカの株高は金融緩和政策に強く後押しされたものだったので、金融緩和の後退、まして利上げとなると、その影響が相当に心配されるところだった。率直に言って、筆者はオミクロン株よりもパウエル議長のほうが数段怖い。
現在懸念されているインフレは、景気の拡大だけを主な原因とするものではなく、環境を意識した化石燃料エネルギー開発の抑制による原油高や、コロナの影響による部品不足など、供給側の要因の影響を強く受けており、意外に長引く可能性がある。これを金融政策で抑え込もうとした場合、資産市場に大きな影響(株価や不動産価格の下落)が出る可能性がある。
経験的には、利上げが始まってすぐに株価が下落することは少なく、利上げが進むたびに投資家は「そろそろ暴落か」という恐怖を味わい、そしてその恐怖が実現するという展開が典型的だ。
投資家としては「株価が3割下落して、回復に2年くらいかかる」というくらいをメドに覚悟を決めて、「下がることはあってもいずれ戻るだろう」と達観するのがおおむね上策なのだが、まあ、「気持ち悪くなった場合に、どこかで1~2割売る」くらいの処置を自分に許してもいいかもしれない(根こそぎ売ることはお勧めしない)。
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