沖縄「泡盛」が本土復帰50年で直面した最大の試練 酒税軽減措置の廃止で「泡盛離れ」に拍車も

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泡盛の酒税軽減が段階的に廃止されることになった(写真:たけぽよ/ PIXTA)

「消費者の泡盛離れに拍車がかかるだろう。かなり厳しい経営環境になりそうだ」

そう話すのは「残波」などのブランドで知られる沖縄の大手泡盛メーカー、比嘉酒造の太田敏・統括営業本部長だ。2021年12月上旬、自民・公明両党がまとめた2022年度の税制改正大綱。その中に盛り込まれた沖縄の酒税軽減措置の廃止に、頭を悩ませている。

沖縄県では、県産の泡盛やビールなどを県内で購入する場合、酒税が軽減されてきた。これは1972年の沖縄県の日本復帰に際し、県外から競争力の高い製品が流入するなどの環境変化を緩和するために定められた「沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律」に基づく。その後も酒税のみならず、沖縄ではさまざまな税制優遇措置がとられてきた。

一方、公平性の観点から、制度の見直しはこれまで何度か議論されてきた。酒税の場合、軽減制度が廃止されると、酒造は増税した分を価格に転嫁する必要が出てくる。値上げによる消費者離れを危惧する酒造側の反対によって、これまで措置は税率変更という形で延長されてきた。

泡盛の酒税は35%軽減

酒税の軽減措置が適用されている沖縄県の事業所は48社。焼酎酒造が1社、ビールメーカーが1社、そして泡盛酒造が46社だ(2021年3月末時点)。

現在、軽減措置によって泡盛の酒税は35%軽減されている。例えば、通常は一升瓶(1800ミリリットル)当たり540円かかるはずの酒税が、沖縄県では351円となる。ビールの場合、沖縄県外であれば350ミリリットルあたり70円かかる酒税が、沖縄県で買えば20%軽減の56円となる。

これらの沖縄酒類メーカーは、県内では税率が低い分店頭価格を安くし、県外産の同様の酒類と比べて価格優位性を持つことができる。2019年度に軽減された酒税額は、泡盛とビールなどでそれぞれ13億円、合計26億円にのぼる。

だが2022年は、沖縄県が日本に復帰してちょうど50年の節目。「与党などに制度の延長要請に行った際、『半世紀続いた緩和措置から、そろそろ卒業するべきではないか』という声が多かった」。泡盛酒造などが加盟する沖縄県酒造組合専務理事の新垣真一氏はそう振り返り、さらなる延長は認められないという危機感を抱いた。

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