日本人の英語が海外で今一つ伝わらない根本原因 国際情勢をinternational situationと訳す人の盲点
それと同じことがinfrastructureについても言えないでしょうか。この言葉は今では「インフラ」という日本語になって誰でも知っていますが、本来topographyと同じように抽象的な言葉です。
topographyがrivers and mountainsなら、infrastructure は roads and bridgesということになります。roads and bridgesは「山川」のようにセットになっています。
もちろんinfrastructureは、実際は道路と橋だけではありませんし、例えばlegal infrastructureといったら道路は関係ありません。しかし、法制度における道路や橋のようなもの、という具体的なイメージをもつことはできます。
英語はひたすら具体性、日本語は抽象的な表現を志向
一方、日本語では、インフラ、すなわち社会基盤といわれただけで、特に具体的なイメージがなくてもそれが何をさすのか、それ以上せんさくすることはしないで、何となく納得してしまいます。
言語に方向性、ベクトルがあるとすれば、英語はひたすら具体性を求め、日本語は逆に抽象的な表現を志向します。infrastructureは「社会基盤」とたまたま一致したかのようですが、言葉としての「向き」がまるで反対に見えます。英語ではroads and bridgesからすべてが始まるのです。
次に、英語が「説明的」であるというのは、「選挙公約」を英語では、「私が選挙ですると言ったこと」と表現するようなことを指します。これについてまとめると、次のような図になります。
(※外部配信先では図をすべて閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
日本語の大きな特徴として、漢語があります。上の例でいえば「すると言ったことをした」ではなく「公約を果たした」と言うのが日本語の表現としては自然なわけで、日本語表現で漢語の役割は大きいのです。
英語を日本語に通訳するときは、できるだけ漢語を使うようにすると、耳障りでない日本語になります。この場合、漢語といってもむずかしい熟語ではなく、「公約」とか「実施」のような基本的な漢語を使うことです。
この例にあげた英語は、レーガン元大統領の言葉です。彼は冷戦のさなか、当時のソ連をan evil empire(悪の帝国)と過激な言葉で呼んだことで知られていますが、同時に説得力のある大統領としてa great communicatorと言われた人物です。
英語圏の政治家は、つねにやさしくわかりやすい言葉で話します。大勢の人に理解してもらいたいと考えるからでしょう。ですから、私たちが英語を使うときのお手本となるので、大統領に限らず政治家の話す英語はとても興味を引きます。
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