激変、異変!2022年「日本で注目の街」の共通点 毎年恒例!「ゆく街・くる街」に選ばれた街は?

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「1618年に始まった史上初の世界大戦『三十年戦争』は宗教対立に始まったものの、次第に各国の政治的な思惑が絡み、主戦場となったドイツでは全人口の35%が犠牲になった。にも関わらず、どちら側も決定的な勝利を収めておらず、そのままではヨーロッパは壊滅的な状態に陥る。

そこで3年がかりで結ばれたのがウェストファリア条約。それによって宗教の自由を認め、宗派が異なるからといって他国に手出しをしない、互いに相手の在り方を受け入れるという仕組みが誕生しました」(島原氏)

自分だけが正しいと、自分の意見を他人に強要することで起きた戦乱を、自分とは違う意見の人がいることを互いに受け入れることで収めたのである。そして、それは宗教が絶対という世界を変え、国民国家を生み、宗教に否定されない科学を育てて産業革命へとつながっていった。

居心地のいい店1軒で街が変わっていく

寛容という概念が世界を大きく転換、成長させてきたわけだが、考えてみると寛容と多様性は一対となる言葉である。自分と違う考えの人がいることを認めることが多様性だからである。

そして都市の魅力は多様性であり、寛容。悪く言えば他人は他人、自分は自分という無関心さである。一度都市でそうした暮らしをした後に、過干渉で自分の意見だけを押し付けようとする地域に戻るのは並大抵な決意でできることではない。

島原氏は推論というが、それがかなりの精度であることは女性に帰りたくない人が多いことからもわかる。一般的に地方に行けば行くほど女性、妻、母かくあるべしが強い傾向があるからだ。もちろん、都市にもそうした傾向のある地域はあり、寛容性、多様性は地域の住みやすさ、将来性を考える上で大きなキーワードといえる。

「地域の主導的な立場にいる人たちの年齢、性別、考え方や地域にどのような店があるかは住む場所を考える時に見ておきたいポイント。軽薄に聞こえるかもしれませんが、従来のその地域になかった新しい感覚の、おしゃれな店が誕生するのはそこにそうした人がいる、コミュニティがあるということ。居心地の良い店が1軒できることで地域は変化します。面白い人がいれば次々に面白い人が集まります。これからはそうした変化が起きる地域かどうかという見方もあってもいいと思います」。

コロナ禍では生活が変わっただけでなく、街の見方も変わったということである。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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