韓国はなぜ、今、朝鮮戦争「終戦宣言」を急ぐのか 理想を掲げた政権争いが生む国際社会との齟齬

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保守派も進歩派も北朝鮮を含めた民族統一を目指すという点では変わりはないが、それをどう進めるかという対北政策はまったく異なっている。保守派は北朝鮮を恐怖政治を行っている独裁国家であり韓国にとっては軍事的脅威だとして、その体制を変えて吸収統一するべきだと考えている。このシナリオを実現するために米韓軍事同盟が不可欠だという親米路線を主張する。

一方、進歩派は南北の分断は保守派が作ったものと考える。北朝鮮とは経済・文化・社会的つながりを進展させ徐々に北朝鮮を変えていく。その過程では連邦制や国家連合のような形態も考えており、強引な統一という手段はとらないとしている。米韓同盟には距離を置き、中国との関係も重視する。

廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領も熱心だった

また南北の対話のきっかけを作るための終戦宣言を主張したのは文大統領だけではない。文大統領が師と仰ぐ廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領(大統領在任は2003~2008年)もまったく同じ対応をしている。北朝鮮の核・ミサイル問題を協議した「六者協議」は2007年7月になんとか合意にこぎつけた、合意文には韓国の主張で「終戦宣言」が盛り込まれた。これを受けてその年の10月、大統領だった廬氏が訪朝し、金正日主席と合意した宣言に「3者または4者の首脳が半島地域で会い、終戦宣言を推進するために協力する」という文言が入れられた。

廬大統領(当時)は北朝鮮の非核化を軽視していたわけではないが、非核化実現には時間がかかり、それを待って終戦にするのは非現実的と判断して、終戦宣言を優先したと語っている。もちろんその後の展開は思惑とは正反対で何も進まなかった。

廬元大統領と同じ道を歩んできた文大統領が対北政策でも同じような政策を打ち出すのは当然だろう。しかし、文大統領は廬元大統領に比べると、かなり理想主義的に見える。青瓦台の中枢には1980年代の民主化運動の闘士が数多く起用されており、南北融和という目標に向かって直線的に動いている。しかし、北朝鮮の核・ミサイル問題や北東アジアの状況を踏まえると、終戦宣言が多くの問題点を抱えていることは明白だ。

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