日本株が低迷しているのは岸田首相のせいなのか 次々と市場に逆風を吹かせる「KY発言」ばかり?

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とはいっても、筆者が接触している海外投資家からは「別に最初から岸田政権には期待していないので、とくに最近失望して日本株を売るほどでもない」との声をよく聞く。日本の株価に与える影響が大きい海外投資家の間でそうした見解があるとすれば「岸田政権だから日本株が劣後している」というわけではないのだろう。

また、「日経平均(ドル換算値)÷ニューヨークダウ」の比率で日本株の相対的な動きを見ると、日本株の劣後は2017年あたりから始まった大きな流れであり、それはもちろん岸田氏のせいではない。

日本株が上がりにくい「真の要因」とは?

なお、筆者のところに「岸田政権が日本株劣後の元凶ではないのか」と質問してくる日本国内の投資家が多い。このような人たちは、だからといって日本株を買いたくない、というわけではなく、「岸田首相が早く政策を変えてくれて、日本株が大いに上がってほしい」という願望が強いようだ。

ただ、岸田政権の政策ばかりが株価を押し下げているわけではないとすれば、政策が変わっても(あるいは岸田首相が仮に交代しても)日本株が大きくアメリカ株などを上回ることは難しいだろう。

ちなみに、百歩譲って、政策的に「株価叩き」が前面に出ていることが日本株の頭を抑えているとしても、それが「政権だけのせいだ」とも言いがたい。というのは、足元の複数の世論調査によれば、内閣支持率が上昇しているからだ。

つまり、日本人全体を見れば「株式投資は、手元資金があふれている金持ちだけがやるものだ」「株式投資は博打だ、怪しいものだ」といったような認識がいまだに強く、「別に株式投資の儲けの多くを税金で巻き上げても、自分の生活には関係ない」と思っている人が多いのではないだろうか。

日本の有権者全体での投票結果が現在の政権を生み出したわけだから、日本人の株式投資に対する一般的な認識が日本株を抑制していることになる。この点では、筆者も証券業界の端っこにいる一人として、株式投資とは何かを広く伝えていく責務を感じる。

さて、肝心の「何が長期的に日本株を抑制しているのか」については、日本企業の収益性の低さと、その背景にある日本企業の経営や組織の問題などが主な要因だと考えている。この点に加え、「では日本株が他国株に対して優位に立つ展開は、これから本当にないのか」については、次回(2022年1月初)の当コラムできちんと解説したい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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