日本株が低迷しているのは岸田首相のせいなのか 次々と市場に逆風を吹かせる「KY発言」ばかり?

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こうした連銀の決定を受けて、当日15日のアメリカの株価は上昇したが、翌16日からは下落基調に転じている。主要マスコミの記事を見ると、「テーパリング加速の発表当日は、連銀の決定は想定どおりだったので株価が上昇したが、翌日以降は緩和縮小を懸念して株価が下がった」との解説が目につく。

だが、アメリカの投資家が、FOMC直後は大いに強気になったが、一晩寝たら考えが悲観にいきなり変わった、などということはありえない。短期的にはFOMCを警戒して売り持ち増、あるいは買い持ち減で身構えていた投資家が多く、結果が出たのでいったん買い直しをしたが、中長期では「やはり連銀の緩和縮小は懸念要因だ」という考えが底流にあった、ということだろう。

やや話がそれるが、市場を動かしている要因は多く、それらの時間軸も向きも異なる。まさに前出のような具合だ。

筆者が「当面株価は上がると見込むが中長期では下がる」と語ると、「そんな見通しはよくわからない。好材料ばかりで株価は上がりまくりという予想か、悪材料が目白押しで株価は下がりまくりという見通しか、どちらかにしてほしい」というご意見もよくいただく。しかし現実はそんなに単純ではないので、あきらめたほうがよい。

それはさておき、なぜテーパリングがアメリカの株価に悪影響を与えるのか。これはひとことで言えば、今回については供給インフレに対処するという面が強く、連銀は供給不足に対して直接は何もできないという点と、金融緩和を前提とした投資家の行動がテーパリングで逆回転しかねないという点の2つに集約される。これらは前回を含めた過去のコラムで書いているので、これ以上の繰り返しを避ける。

すでにアメリカの株式市場内部で「怪しい動き」

加えて前回のコラムでは、英フィナンシャルタイムズ紙が、一時は時代の寵児であったキャシー・ウッド氏の写真をわざと逆さまに掲載したことを「悪趣味な記事ではあるが潮目の変化を示しているかもしれない」と述べた。これ以外にも、変化だと解釈される事象がアメリカの株式市場に増え始めている。

主要株式指数(S&P500種指数など)を見ると、アメリカの株価がまだそれほど大きく崩れているとは考えにくい。しかし、今年前半に市場全体よりも大きく上昇したIPO(新規株式公開)銘柄や、話題を集めたSPAC(特別買収目的会社)の価格は、11月半ばあたりからかなり下落色が鮮明だ。

こうしたIPO銘柄やSPACの価格動向は、例えばIPO銘柄に投資するETF(上場投資信託、例:Renaissance IPO ETF)などや、SPACに投資するETF(例:Defiance Next Gen SPAC Derived ETF)などの価格から、推し量ることが可能だ。

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