日産ノートが並み居る競合車の頂点に立てた理由 日本カー・オブ・ザ・イヤー2021-2022選出の裏側

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つまりノートシリーズは多くの選考委員が「いいクルマ」と判断したモデルが受賞したわけだ。実はこれ、一昨年のトヨタ「RAV4」、昨年のスバル「レヴォーグ」と同じ流れである。

確かにノートシリーズは新生日産を象徴とする改革が随所に見られたこと、電動化(e-POWER)&電脳化(プロパイロット)といった現在のクルマに求められる要件をしっかり抑えている事、そしてベーシックモデル(ノート)、小さな高級車(ノートオーラ)、スポーツモデル(NISMO)、クロスオーバー(AUTECHクロスオーバー)を取り揃え、選択肢が広いことなど、総合力の高さが光った。

逆にGR86/BRZは趣味性の高いスポーツカーであることやピュアなガソリンエンジンのみの設定である事、スポーツカー文化を継承してくれたことなど、共感できる人にとっては高い評価だったが、それとは違う評価軸の人には厳しい評価だったと言うことになる。ただ、逆を言えば「クルマの本質」の部分で勝負したと言う意味では、むしろ善戦だろう。

中には「10ベストカーにトヨタが複数台いるから票がばらけた」と言う意見もあるが、仮にMIRAIとランクルがいなかったとしても、その票がそのままGR86/BRZにスライドすることはないだろう。なぜなら、同じメーカーと言っても、ジャンルもキャラクターも全く違ったクルマたちなので……。

ただ、個人的に残念だったのは初代86/BRZと同じく“無冠”に終わってしまったことだ。同じスポーツカーながらも、マツダロードスターは過去に2回も受賞しているのとは対象的といえる。

ゴルフが総合5位に伸び悩んだワケ

インポート・カー・オブザ・イヤーを受賞したゴルフは、総合では5位と伸び悩んだ。先代のゴルフⅦが輸入車初のイヤーカーだったことを考えると残念な結果となった。本来は複数のパワートレインとモデルラインナップでゴルフシリーズとしてのエントリーする予定だったようだが、コロナ&半導体不足で48Vマイルドハイブリッドのみの展開になったことも影響しているが、筆者はそれだけが原因ではなく「Ⅶ→Ⅷ」への伸び代が思ったほどではなかったことも原因の1つだと考えている。つまり、他のクルマの進化や伸び代が大きい……と言うことも意味している。

最後に、今年のカー・オブ・ザ・イヤーはこれまでにない多種多様なモデルたちの登場で、過去に例がない激戦だった。その理由はパワートレイン1つとっても、ガソリン/ディーゼル/ハイブリッド/PHEV/FCEV/BEVと抱負で、モデルバリエーションはセダン/ハッチバック/クロスオーバーの定番に加えて、ラダーフレーム、ミッドシップ、FRなどさまざまな選択肢が出揃ったからだ。

昨今、「クルマはつまらない」と言う意見もあるが、個人的には過去・現在・未来を一度に楽しめる類いまれなタイミングであり、むしろいちばん楽しい時期だと思っている。まぁ、通り一辺倒で食わず嫌い、「あの時はよかった」シンドロームの人には到底理解できないと思うが(笑)。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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