日本企業が理解すべき「物流での競争が不毛」の訳 自前の物流が本当に他社との差別化になるのか

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非競争領域ではライバル企業との無用な戦いは避けて協調し、絞り込まれた競争領域(戦略性の高い分野)に経営資源を振り向けていくことが、自社にとってもライバル企業にとってもメリットになる。各企業が絞り込まれた競争領域においてレベルの高い競争を繰り広げていけば、業界自体の質も上がっていく。ポイントは、経営者が非競争領域を認識して不毛な争いを避け、ライバル企業と協調できる勇気を持てるかどうかだ。

さらに、「物流は、水や電気のように社会の基礎をなすインフラである」という視点も重要だ。例えば、企業や飲食店などが水を必要とする場合、川から水を引いて浄水しなくても、公共の水道網を活用できる。

「○○の天然水」など付加価値の高い水が必要な飲料メーカー(「水」が競争領域である場合)は、独自に地下水をくみ上げるなど自前で水の調達が必要だが、飲食店の開店時などにその都度、水源から自前で水道管を敷設しないといけないとしたら、非効率きわまりない。水を競争領域と考える飲食店はかなり少ないだろう。

会社ごとに物流インフラを整備することはきわめて非効率であるうえ、物流クライシスで運び手不足が加速することを考えると、大きな社会的ロスにつながりかねない。

物流を非競争領域と割り切る

この社会的課題に対して、業界別の物流プラットフォームは有望な解決策の1つになりうる。さまざまな物流やサプライチェーンに関する機能を持つプラットフォームを業界ごとにつくり、誰でも利用可能にするという発想(プラットフォーム化によるシェアリング・エコノミーの発想)が、物流を取り巻くさまざまな難題の解決策を導き出すと筆者は考えている。

物流面での競争が必ずしもメリットにつながらないケースが数多くある。特に、「成長が鈍化もしくは縮小している業界」は、総じて利益率が低く、コスト削減のニーズが高いケースが多い。そうした場合、物流を非競争領域と割り切ってライバル会社と機能やサービスをシェアする発想が受け入れやすくなる。

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