日本企業が理解すべき「物流での競争が不毛」の訳 自前の物流が本当に他社との差別化になるのか

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縮小

例えば、タイヤ業界はその典型で、年々市場が縮小している。この数年は新型コロナウイルスの影響もあって市場は低迷し、2021年の国内販売金額はついに1兆円を割り込み9719億円となった(経済産業省生産動態統計、2021年4月速報)。

こうした縮小市場では、物流を競争領域として捉えてライバル会社同士でしのぎを削り合っても、誰の得にもならない。逆に、この先の市場の縮小を見込んで、思い切った効率化が求められる。タイヤ業界に限らず、さまざまな業界の大手企業は、全国に自前の物流・販売拠点を構えていて、販売先への供給体制を独自に整えている。

ここに共同配送や受発注・決済、トレーサビリティーなどさまざまな機能をつけ加えた「業界別物流プラットフォーム」を導入できれば、それまで抱えていた問題が一気に解決し、大幅な効率化、コストダウンを図ることができる。プラットフォームを通じて物流は共同化され、受発注や決済もプラットフォームが窓口となって一元的にコントロールするため非常に効率的だ。

自動車用品が緊急に必要な状況はめったに起きない

タイヤやバッテリーの大手メーカーは、それぞれ全国に販売会社や拠点を自前で持っている。顧客は、自動車ディーラー、自動車修理工場、オートバックスやイエローハットなどの量販店だ。どの業界でもそうだが、消費者を直接握っているところは発言権が大きく、この業界でも顧客から「商品をすぐに持ってきて」と言われれば、(在庫があれば)早い場合には即日、遅くとも翌日には届ける体制を各メーカーとも敷いている。

だが実際のところ、自動車用品が緊急に必要な状況というのは、めったに起きない。急に季節外れの雪が降ってスタッドレスタイヤへの交換が必要になることはあるかもしれないが、そうした万が一の状況に合わせて物流体制を整えるのはナンセンスだ。

しかし、自動車用品だけでなく多くの業界で、部外者から見ると「過剰」と思えるような配送サービスを提供しているのが実情だ。

タイヤはかさばり在庫のスペースもとるので、小売店側は「出前一丁スタイル(発注後翌日納品)」の配送体制を便利と感じている。そのうえ、在庫がなくてもすぐに持ってきてもらえるので、在庫管理を緻密にやらなくても済むメリットもある。

(出典)アクセンチュア作成
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