ジェフ・ベゾスが祖母に放った「残酷すぎる一言」 プリンストン大学卒業生への伝説のスピーチ
そこで祖母のために計算してみることにしました。1日に吸うタバコの本数と、タバコ1本につき何回吸うかなど、およその数を計算しました。それらしい数になったので、前の座席に顔を突き出して祖母の肩を叩き、鼻高々にこう言いました。
「ひと吸いで2分なら、もう寿命が9年縮んだね!」
それからのことは、鮮明に脳裏に焼きついています。私にとっては思いがけない出来事でした。頭がいいね、よく計算できたねとほめてもらえると思っていたのです。「ジェフ、なんて賢い子なんだろう。ややこしい推測をして、1年が何分かを計算して、そこから割り算したんだね」なんて。
「賢いよりも優しいほうが難しいんだ」
でも違っていました。祖母がわっと泣き出したのです。私はどうしていいかわからず、ただ後部座席に座っていました。祖母が泣いている横で、祖父は黙って運転していましたが、高速道路の脇に車を止めました。祖父は車から出て後ろにまわり、後部座席のドアを開け、私が出てくるのを待っていました。叱られるのだろうか?
祖父は非常に知的で寡黙な人でした。厳しく叱られたことなどありません。でも今日、はじめて叱られるのかもしれない。車に戻って祖母に謝りなさいと言われるのかもしれない。
これまで祖父母とのあいだでこんな経験ははじめてで、どうなるのかまったく見当もつきませんでした。私と祖父はトレーラーの脇に立ち、向き合いました。祖父は私を見て、少し黙ったあと、優しく静かにこう言ったのです。
「ジェフ、賢いよりも優しいほうが難しいんだ。いつかおまえにもわかるときがくる」
今日みなさんにお話ししたいのは、才能と選択は違うということです。頭のよさは持って生まれた才能です。優しさは選択です。才能は簡単です。生まれついてのものですから。選択は難しい。うっかりしていると才能に溺れてしまいます。そうなると、おそらく選択を誤ってしまうでしょう。
ここにいるみなさんはたくさんの才能に恵まれています。頭の回転が速く賢いことも、みなさんの持って生まれた才能の1つでしょう。難関を突破してこの大学に入ってきたわけですから。もし頭のよさが何らかのかたちで示されていなければ、入学が許可されるはずはありません。
いまこれから、みなさんが驚くべき世界を旅するにあたって、その頭のよさが役に立つことは間違いありません。私たち人類は、ときにはつまずきながらも、それでも驚くべきことを達成するでしょう。
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