三宅:昨年あたり、厚労省が看護師のもっと高度な資格を認めるというような話がありましたね。
亀田:そういうことです。専門学校は大学の半額以下の学費だから、奨学金でほとんど賄える。今度、安房に作った専門学校は、「トランポリン社会」をどうつくるかという考えに基づいています。日本は学校を卒業するとずっとひとつのラインに乗って、定年まで一本道という社会でした。そこから落ちると、もう元のラインに戻れない。あるいは自分が入ったときは景気がいい産業だったとしても、斜陽になってしまうと、ほかの産業に移るのが難しい。デンマークなどでは仕事を変えるときの収入保障などの制度があるけれど、日本には無収入の間の社会保障がほとんどない。たとえば製造業から医療介護業界に移ろうと思っても、医療介護の業界は資格社会ですから、何も資格がないと不安定雇用に甘んじるしかない。資格を取るためにはコストも時間もかかる。
でもトランポリンのように、一度落ちた人をまたラインに戻すことができれば、雇用を流動化させることができる。それが今、必要とされていて、この専門学校はその仕組み作りのひとつです。そのために学費を安くして、社会人入学を圧倒的に増やしています。加えて、館山でいちばん大きい工場が閉鎖になったときに、その社宅が格安で売りに出たのですが、信介(双子の兄)が、それを学生寮にしようと30分で購入を決めました。直すのに数千万円かかかりましたけど、おかげで家賃を光熱水道費込みで月額2万円と、破格で提供できています。
今の世で求められているのは“クリエーター”
亀田:あとは「子育てOURS」という子育て支援。もう今の制度の中では働き世代のニーズに答えられないので、制度でできることと無認可保育とを組み合わせて、まずやることを先に決めました。ゼロ歳児から小学校6年生まで、365日・24時間保育、病児・病後児保育、幼児教育、低学年のスポーツのサークルと、高学年の受験塾。ここまで全部やります。
さらにシングルマザーなどが仕事帰りに子供を迎えに来て、うちに帰ってから食事を作るのは大変なので、そういう人たちは最初に言っておいてもらえば、そこで親子一緒に夕食を食べられるようにして、できれば風呂まで入れて帰す。これは魅力的だから、若い人たちが安房に移住したくなりますよ。あとは障害者スポーツ。いずれ鴨川に車いすのトレーニング施設がいくつか来ると思います。
三宅:だんだん町づくりのレベルを超越し、別の国を作るみたいな話になってきてますね(笑)。税金を取って回したほうがいいかも。本当に、なぜそんなに次々といろいろなことに挑戦できるのか不思議です。
亀田:亀田のミッションですね。われわれが最も尊ぶのはチャレンジ精神なのです。
三宅:亀田先生にとってチャレンジは当たり前ということですね。
亀田:やらなくてはいけないことが多くて、なかなか間に合わないんですよ。
三宅:人もいっぱい必要ですね。
亀田:そうですね。いろんな人が集まってきていて面白いですよ。当院は職員に弁護士もいるし、元代議士もいるし、研究者もいます。カネはないけど、カネ以外はだいたいあるのです。カネを貸してくれたら使い方はうまいですよ(笑)。でもさっき言ったようにカネは使ってなんぼだから。今の世の中では求められているのは評論家じゃない、クリエーターですよ。医療も含めて、あらゆるものは過去の延長線上に答えはないと思います。
三宅:この「ビジネスプロデューサー列伝」シリーズでは、たくさんの挑戦者のお話を紹介してきましたが、今回が最終回となります。トリを飾るにふさわしい、刺激的なお話をありがとうございました。
(構成:長山清子、撮影:今井康一)
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