勇退「いえぽん」命の危険感じても審判続けたワケ 時には批判を受けた家本政明氏を支えた妻の言葉
「いえぽん」は危険を顧みず、美を求めた。今季限りでサッカー国内トップリーグの担当審判員を勇退した家本政明氏(48)が7日、日刊スポーツのインタビューに応じた。時に命の危険を感じながら、笛を吹き続け、批判を受けながらも、SNSを積極的に発信。家族の支えがあったからこそ、有終の美を飾った。
子どもから「パパは何でこういう仕事しているの?」
「審判をしていて、命の危険を感じたことは?」。
そう問うと「ありますよ。銃を向けられたことはないですけどね」。何事もなかったかのように、家本氏は笑ってみせた。ただ、ある日のこと。「自宅に変なモノが送られてきた」。家族に知られないよう、そっと処理した時もあった。中東での試合を裁いた日は、激高したサポーターが、フェンスを乗り越えてきた。「これはまずいと思いました」。すぐさま、約20人の警備が自身の周りを取り囲んだ。パトカーに先導され、ホテルに戻ったこともあった。
危険を顧みず、笛を吹き続け、誹謗(ひぼう)中傷も意に介さず、SNSを始めた。「風穴開けたかった」。ツイッター、インスタグラム、クラブハウス、note…。あらゆるツールで、声を届けようとした。もちろん批判のメッセージも多く届いたが「待っている人がいっぱいいる」と信じ続けた。「審判はブラックボックスで閉ざされた状況。色眼鏡で見られている。出来る限り、開示することによって、何か変わるかもしれない」。愛称は「いえぽん」。「家本でやるより、1クッション置きたくて」。アカウント名「いえぽん」のツイッターは気付けば、フォロワー数が3万人を超えていた。
時にSNS上での攻撃の矛先は、家族に向けられることもあった。自身がネットニュースなどでたたかれれば、学校に通う子どもたちが「お前の父ちゃんおかしいだろ」と標的にされることもあった。子どもたちから「パパは何でこういう仕事しているの?」と言われることもあったが「未来を見せたかった」。