靴底に穴があいた頃が自分の足になじんだ時--『紳士靴を嗜(たしな)む』を書いた飯野高広氏(服飾ジャーナリスト)に聞く


--実際の手入れは。

決してむずかしくはない。要は、靴の汚れを落として、栄養を与えることだ。人間の生活と一緒で、汚れたなと思ったら風呂に入り、疲れているなと思ったら休む、また好きなものを補給する。かびが生えた、くさい、靴の中に汗がしみたといった困った時はどうするか。これも工夫で直る。「民間療法」としてはお酢を薄め消毒する方法もある。

--値段については。

ファッション誌にあるような1足10万円や20万円以上のものだけが靴の楽しみを与えてくれるわけではない。履き心地や長く使えるかも評価の決め手になる。大まかに言って、普通のビジネスマンは2万円台の終わりから3万円台の靴を買うのが無難だろう。

価格だけでバシッと切るのは難しいが、それぐらいの値段の靴を年2回のボーナスで買い、それの底に穴があいたら、実はちょうど足になじんだ時期となる。そしたら靴底を張り替える。修理中は休ませた形で、またローテーションに復帰させる。それで現実に履き心地のいい靴を増やしていける。足元でのおしゃれも出来上がってくる。ファッション誌では高い靴ばかりだが、それが「現実解」ではないわけだ。

1週間に同じ靴は2回ぐらい履くことにしておく。野球のピッチャーの先発と同じで、ローテーションがちゃんと組めていると、結果的にどの靴も長持ちする。1足を履きつぶすよりもコスト的にも安いのではないか。

(聞き手:塚田紀史 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2010年7月31日号)

いいの・たかひろ
1967年東京生まれ。大学卒業後、大手鉄鋼メーカーに11年余り勤務し、2002年に独立。紳士靴に限らず、スーツ・コート・傘・鞄など、男性の服飾品全般を執筆領域とし、歴史的背景を絡めつつビジネスマン経験を生かした視点で論じる。インターネットサイトAll Aboutで紳士靴ガイドを務める。

『紳士靴を嗜む』 朝日新聞出版 1680円 223ページ


  
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