仏大統領選で人気急騰「超過激な極右候補」の正体 政治経験ゼロ、イスラム移民排撃するゼムール氏
来年4月に予定されるフランスの大統領選に向け、極右旋風を巻き起こしているのがジャーナリスト出身のエリック・ゼムール氏(63)だ。
11月30日に大統領選への立候補を正式表明したゼムール氏は12月5日、パリ北東郊外で初めての約1万5000人の支持者を集めた大規模な政治集会を開催し、「フランスが帰ってきた!」と叫んだ。一方、極左活動家ら約2200人が反ゼムール抗議デモを行った。
政党を持たない独立候補で政治経験ゼロのゼムール氏は、大統領候補者としては異例だ。政治コメンテーターとしてのメディアへの露出度は少なくなかったが、政治家としての知名度は皆無だった。
この夏以降、いきなり注目されるようになったのは、本の出版と、それに合わせるようにメディアでイスラム移民排撃の過激発言を繰り返す相乗効果の戦略で成功したからだった。過激発言で訴えられて司法の場でも戦う同氏への注目度は高まるばかりだ。
変わりはてたフランスを救う?
政治好きのフランス人にとって、名門パリ政治学院卒の優秀な頭脳と博識による言葉巧みなゼムール発言は、時に共感を呼び、時に激しく国民をいら立たせながら、フランスの政治議論を盛り上げている。
「改革ではなく、国を救うのが私の使命」と言い切るゼムール氏の主張は、フランス社会への同化を拒否するイスラム系移民によって変わりはてたフランスを衰退から救うことにあるという。
フランス人は大革命で王権やカトリック教会の権威主義を否定し、自由、平等、友愛の普遍主義を国是としているため、イスラム移民に対する差別を建前では否定している。実際、人種を根拠とする人口調査は禁止されており、黒人、アラブ系、アジア系などに人口分類することはしていない。
ところが想定で人口の1割に達する約600万人のアラブ系移民のうち、約500万人がイスラム教徒という現状があり、彼らの同化政策は効果を上げられず、多くは穏健イスラム教徒だが、同化はしていないのも現実だ。
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