鉄道バリアフリーで「料金徴収」受け入れられるか 利用者全体で「薄く広く負担」する意味とは?

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一方でバリアフリー化の事業費の全部または一部をすべての利用者に転嫁することは賛否両論がありそうである。身体的に階段の移動ができない人や制約される人にとっては、エレベーターやエスカレーターは鉄道利用に必要不可欠な設備となるが、階段を利用できる人にとっては「快適設備」といえなくもないからである。

なくても困らないが、設置されていれば、重い荷物を持っているとき、あるいはへとへとに疲れているときには快適に上下移動ができるという設備という位置づけにも見えるからだ。

「快適設備」と捉えるなら、「快適に列車を利用できる設備」として、利用者を自社に誘引するための手段やサービスという見方もできる。これは、たとえば、列車の快適設備に対する料金である「グリーン料金」や速達性の対価である「特急料金」をラインナップしていることと同視することもできる。

誰でもいつ必要になるかわからない

快適な移動や速達列車を利用したい人が支払うものであり、さほど快適な移動を望んでいない人や急がない人は、普通座席や料金不要の列車を利用すればよい。ただその考え方を当てはめると、エレベーターやエスカレーターの設置費用が加算されると利用しない人も、運賃を払う際に設置費用を負担することになってしまう。

バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)は、行政の責務や施設管理者の責務を定めるほか、国民の責務を定める(第7条)。高齢者や障害者の自立した日常生活、社会生活確保の重要性について理解を深め、公共交通機関を利用して移動するために必要となる支援等について必要な協力をするように努める、というものである。

この国民の責務は努力規定であり、理解をせず協力をしないからといってペナルティの対象になるわけではないが、どんなに健康な人で階段を走って上り下りすることができる健脚者であっても、事故や病気によって移動制約者になる可能性はつねにある。自分でなくても自分の家族が移動制約者になるかもしれない。バリアフリーに必要な費用を利用者が薄く負担し合うということにはやはり一定の合理性があるといえるだろう。

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