永守重信「理想と夢なくしては成しとげられない」 日本電産創業者が説く生き方・経営・運のつかみ方

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――人間が何かを成しとげるには高い意識を持つことが大事だということを『成しとげる力』では伝えていると思いました。一方で、「どうせ自分なんて」と卑屈に考えて心が折れてしまう人もいます。

世の中には過大評価と過小評価が多く、両方とも問題だ。自分の力が100%以上あると過大評価している人は育てにくいし、「私はそんな高い地位に向きません」と過小評価しているのも育てにくい。中庸がいちばんで、素直で謙虚な集団は会社も成長する。

私は失敗や挫折を経験した人間が好きだ。年齢を重ねた人にはそれまで働いてきた会社では燃焼しつくしていない人やもっとやりたい人がいる。もう燃え尽きた人ではなく、燃え尽きられなかった人を呼ぶといい。

死ぬほど働かないと運はめぐってこない

――「運が7割」とも書かれています。

この話をすると「人生は運」だとバカなことを言う人がいるが、7割の運に近づくのに絶壁がある。死ぬほど働かないと運はめぐってこない。逆に3割ものすごく努力をしたら、運やチャンスが次々とくる。だから困難に近づいていかないといけない。

ところがたいていの人は困難から逃げてしまうから、運がこない。困難はみんな近づきたがらないが、困難のなかに運がある。

世の中はよくできている。悪いことがあったら、いいことは2回あると言っているが、それが私の真理だ。私のように波瀾万丈な人生はものすごくいいこともあれば、死ぬほど苦しいこともある。でも多くの人は大きな困難もなかった代わりに大きないいこともない。

よく調べればいいことと悪いことはみんなプラスマイナスゼロだが、「私の人生は悪いことばかり」という人は大きな喜びがない分、悪いイメージしかないということだ。

『成しとげる力』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

――75歳を迎えた一昨年に125歳まで生きる決意をして、新50年計画を立てましたが、今でも永守さんは困難にぶつかっていますか。

毎日困難がありますよ。もともと「〝兆円企業〟」が目標だったが、新50年計画で次は100兆円を目指す夢をもっている。そこまで生きられるかどうかは神様がお決めになることだが、足元でコロナ禍がやってきたりといろんな問題が起きている。ただ私は「足元悲観、将来楽観」と言っている。先にものすごく明るいものがみえているとそう思わないとできない。

これから会社を大きくするために人を集めなければいけないが、人材は不足している。もっと会社が大きくなるはずだが、ものすごい数の人を集めないといけない。中途入社もいるが、私が京都先端科学大学を運営するようになったのは10年先の人を自ら育てていきたいと思ったからだ。

(インタビュー後編に続く、12月10日配信予定)

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

東洋経済編集部員・記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。現在は、特集や連載の企画・編集も担当。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。早稲田大学台湾研究所招聘研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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