さらばS660、日本独自の軽スポーツカー文化に幕 ホンダ伝統のSシリーズ終幕、今後の復活は?

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S660のリアビュー(写真:本田技研工業)

そう考えると650台の追加販売は、ホンダにとって、S660の生産終了を惜しむ熱いファンに対する精一杯の誠意だったことがうかがえる。F1(フォーミュラワン)をはじめとするモータースポーツでの活躍により、多くのファンを獲得してきたホンダにとっては、スポーツカー好きは昔からのお得意様だ。とくにS660のようなモデルは、軽自動車としては高価ではあるが、200万円台から300万円台で購入できる価格帯も魅力だ。その意味で、「誰にでも手軽に買えるスポーツカー」という、一定のジャンルを築いてきたモデルのひとつだといえる。

ホンダによると、S660のユーザー層は「50代の男性がメイン」だという。ちょうど、1980年代後半から1990年代前半に起きたF1ブームを知る世代だ。当時は「マクラーレン・ホンダ」など、ホンダがエンジン供給するチームが数々のタイトルを獲得し、大活躍していた時代。ブラジル人ドライバーの故・アイルトン・セナ氏や日本人初のF1ドライバー中島悟氏といったスター選手がいたことや、レースによっては日曜のゴールデンタイムにも行われたテレビ中継などにより、日本に一大ブームが巻き起こった。S660のオーナーは、まさにそれをリアルタイムで体感した世代だろう。

手頃に買えるスポーツカーとしての価値

ホンダが「定量的なデータはないものの、スポーツ走行を楽しまれている方が多い印象」というように、ワインディングやサーキットなどで、走りを楽しみたい層が中心だ。スポーツカーには、フェラーリやランボルギーニといった輸入車はもちろん、国産でもホンダ「NSX」や日産「GT-R」など、2000万円を優に超えるモデルは多い。中には、億を超える価格のモデルさえある。それら高級スポーツカーこそ買えないものの、S660なら手が届く。そんなハードルの低さがS660をはじめとする軽スポーツカーの魅力だ。

S660と同様にオープンボディのスポーツカーであるダイハツ「コペン」(写真:ダイハツ工業)

軽自動車のスポーツモデルには、S660以外にも、同じオープンスポーツのダイハツ・コペンや、スズキの5ドアハッチバック・アルトワークスなどがある。また、ホンダでも、軽ワゴン「N-ONE」に「RS」というスポーツグレードを設定する。いずれも、ラインナップに6速MT仕様を用意し、軽量な車体による俊敏な走りが楽しめるモデルだ。ユーザーはやはり、サーキットも含め、愛車でスポーツ走行を楽しみたい層が多い。中には大学生などの若いユーザーもいて、意外に年齢層は幅広い。

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