さらばS660、日本独自の軽スポーツカー文化に幕 ホンダ伝統のSシリーズ終幕、今後の復活は?

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S660のサイドスタイリング(写真:本田技研工業)

軽スポーツカーの愛好家は、絶対数こそファミリー層などに人気が高い軽トールワゴンや軽スーパーハイトワゴンのユーザーには及ばない。だが、確実に一定数は存在し、まさに昔から続く「クルマをスポーティに楽しむ」文化を支えているユーザーたちだ。ただし、コペンやアルトワークスについても、さほど販売台数が多いとはいえず、ホンダが法規対応によりS660を諦めたように、いつまで販売が続くかは先行き不透明だ。

それは、N-ONEのRSグレードも同様だろう。加えて近年は、軽自動車にも電動化などカーボンニュートラルに対応する動きがある。開発や生産のコストを考えると、あまり台数が望めないスポーツモデルが生き残れない可能性も十分にある。日本固有の文化ともいえる軽スポーツカーの火が消えないことを祈るばかりだ。少なくとも、ガソリンエンジン搭載の軽スポーツカーが新車で手に入るのは、今が最後のチャンスである可能性は十分にある。

Sの称号を受け継いだモデルの可能性に迫る

筆者は、ホンダに「EV化などを施したS660の次期モデルが出る可能性」についても聞いてみた。答えは、「現時点でお答えできることはないのですが、運転する楽しさや操る喜びについては、ほかのモデルへと引き継いでいきたい」という。とくにS660は、ホンダの原点ともいえるSシリーズの血統を受け継いだモデルだ。「乗って楽しいクルマ」の追求は、まさに創業者の故・本田宗一郎氏が作り上げた「ホンダスピリット」の具現化でもある。そういった伝統を守りつつ、次世代に続く革新性、そしてS660のように誰にでも手が届く手軽さも併せ持つ。そんな新しいスポーツカーの登場に期待したい。

平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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