さらばS660、日本独自の軽スポーツカー文化に幕 ホンダ伝統のSシリーズ終幕、今後の復活は?
S660の新車販売台数は、2015年4月の発売から2021年10月末現在までの6年6カ月間で3万5572台、年平均で約5473台程度だ。軽自動車でもっとも売れているホンダの軽スーパーハイトワゴン「N-BOX」が、2020年通年(1~12月)における新車販売台数で19万5984台を販売しているのとは対象的だ。もっとも、N-BOXは、登録車を含めた全車種で4年連続、軽自動車では6年連続1位となっているから、近年需要が減少しているスポーツモデルのS660と比較対象になりにくいのは確かだ。だが、それでもS660の販売台数はかなり少なく、売れ筋と呼ぶにはほど遠い。やはり生産終了の原因は、販売台数の少なさだったのだろうか。
ホンダによれば、一番の要因は「法規対応」だという。例えば、衝突被害軽減ブレーキの義務化。2020年1月に「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等」が一部改正され、国産車の場合、2021年11月以降に出す新型車については、衝突被害軽減ブレーキを搭載していないと販売ができなくなった。ほかにも側突(側面からの衝撃)に対する安全基準や排ガス規制の強化など、今後もさらに法規制は厳しくなってくる。ホンダでは、それらに対応させるには、「かなりの開発工数が必要」となるため、S660の生産終了について「苦渋の決断」をしたという。つまり、開発コストが膨大となるため、S660の販売台数ではもとが取れないということだ。
日本独自の軽自動車というカテゴリーの壁
S660は、日本独自規格の軽自動車であることも大きいだろう。例えば、2021年8月に新型が発売された「シビック」。50年以上の歴史を誇り、ホンダを代表するクルマの1台だが、先代モデルの国内販売台数は、登場した2017年からの累計で約3万5000台。年平均で約8750台程度だから、こちらもN-BOXなどには及ばない。
ただし、シビックの場合は、北米や欧州など、世界170を超える国や地域で販売されているグローバルモデルだ。先代シビックの2020年度グローバル販売台数は約68万台で、S660どころか、N-BOXさえもはるかに凌ぐ。国内の販売台数が少なくても世界的にはかなりの「売れ筋」だといえ、法規対応などに開発コストがかかっても新型車を出しやすい。S660の悲劇は、ほぼ国内でしか販売できなかったことも要因のひとつではないだろうか。
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