テニス選手に告発された中国前副首相の「過去」 「目立たず、波風立てず」で共産党幹部に出世
中国の元副首相・張高麗は、中国のテニスチャンピオンに性的関係を強要したという告発にさらされるまで、中国共産党が幹部に求める資質を体現しているように見えた。真面目で規律正しく、時の指導者にどこまでも忠実である、という資質だ。
張は製油所の管理職から中国沿海部での指導的な地位へと着実に出世してきたが、ほかの派手で野心的な政治家とは違ってスキャンダルの餌食となることはなかった。彼が世に知られるようになったのは、そのモノトーンで落ち着き払ったキャラクターによるところが大きい。中国共産党の最高幹部の1人になったとき、張は自身の行動に問題がないか監視するよう人々に求めた。
「厳格、控えめ、寡黙」。中国メディアに掲載された数少ない人物評は、張をこのように描写している。国営新華社通信によると、趣味は読書、チェス、テニスなど。
だがプロテニス選手・彭帥の告発により、張の私生活は世界から炎のような注目を浴びることになった。張は今や、公的な説明よりも秘密と管理を重んじる中国政治の象徴と見られるようになったのだ。
今回の告発により、中国指導部に対しては、「清廉潔白」を叫びながら秘密のベールに包まれた身内の私生活は例外扱いにしているのではないか、といった疑問が向けられるようになっている。
共産党幹部の性行為強要はめずらしくない
アメリカのシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の研究者ジュード・ブランシェットは、「張は共産党が必死でつくり上げてきた『そつのない役人』のイメージそのものだった」と話す。
長年にわたる断続的な付き合いの中で張にセックスを強要されたとする彭の告発は、まだ事実であると証明されたわけではない。この問題を当局が徹底的に封じ込めようとしていることからして、張が公的に説明を求められる可能性はまったくといってなさそうだ。たとえ張が汚名をそそぐことができるのだとしても、である。彭が告発を投稿して以降、彭も張も公に対しては完全に口をつぐんでいる。
「悲しいことだが、権力に歯止めの利かない不透明で家父長的なシステムの中では、この種の性的搾取は珍しいことではない」とブランシェットは指摘する。