「オミクロン株」科学者たちが強く懸念する理由 これまでにない早さで研究が始まっている
オミクロン株に特化したワクチンをわずか数週間で作るのは奇跡的な快挙である。しかし、そのワクチンを製造して流通させるには、気が遠くなるような問題が発生する。
世界中の人々を守るために新たなバージョンが必要なのであれば、製薬会社はその新しいワクチンを最も必要としながらも、最も入手する余裕のないアフリカ諸国に提供すべきだと、デ・オリベイラ氏は言う。
「少なくとも南アフリカは独自にワクチンを調達することができた」と同氏は言う。しかし、スーダン、モザンビーク、エスワティニ、レソトなどの貧しい国では、低コストの選択肢が必要になる。
ファイザーは、アフリカ諸国向けの低コストのワクチンについての質問には答えなかった。モデルナのホーゲ氏によると、同社はすでにアフリカ連合との間で、1億1000万回分のワクチンを投与量の半分あたり3.50ドルで提供する契約を結んでいるという。
T細胞が認識できない領域がある可能性
研究者にとって、結論を早急に出すことは避けたいものだが、これはベータ株が登場した時に犯した過ちである。ムーア氏によれば、ベータ株の予備テストでは、既知の変異を1つしか考慮していなかったため、免疫系の回避能力を過小評価していたとのことである(幸いなことに、この同変異株は感染力が弱いことも判明した)。
オミクロン株に対するワクチンの有効性についての全体像を把握するためには、研究者は抗体レベルだけでなく、感染した細胞を認識し破壊する能力を持つ免疫細胞も調べる必要がある。T細胞と呼ばれる免疫細胞は、感染が悪化して重篤な病状や死に至るのを防ぐのに重要だ。
オミクロン株の変異の一部は、T細胞が標的とするウイルスの部位に起きる。つまり、T細胞にとってこの変異株を認識するのはより難しい可能性がある。
ケープ・タウン大学の免疫学者、ウェンディー・バーガーズ氏によれば、T細胞が認識できる数百の領域のうち、これらの変異によりほぼ6つの領域が変化する可能性があると、コンピューターのシミュレーションですでに予測している。
たいしたことではないと思うかもしれない。しかし、人間はさまざまなグループのT細胞を作るため、突然変異によりノックアウト(変化)した部分を標的にしているのがどのグループなのかによって、オミクロン株の影響をほとんど受けない人もいるだろう――そして攻撃されやすいままの人たちもいるかもしれない。
バーガーズ氏は、オミクロン株に感染した50人の血液を集め、変異がどのように広がるのかを検証したいとしている。血液サンプルが集まり次第、「1週間の徹夜と分析によって」結果がわかるだろうとしている。
(執筆:Apoorva Mandavilli記者)
(C)2021 The New York Times News Services
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら