「オミクロン株」科学者たちが強く懸念する理由 これまでにない早さで研究が始まっている

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研究者たちはオミクロン株に対し、ほかのどの変異種よりも迅速に反応した。南アフリカで23日に初めて問題の兆候が確認されてからわずか36時間で、研究者たちは100人の感染患者から入手したサンプルを分析、データを比較研究し、世界に警告を発したと、ダーバンのネルソンR.マンデラ大学医学部の遺伝学のトゥリオ・デ・オリベイラ氏は述べる。

最初に警告が発されてから1時間以内に、南アフリカの科学者たちは新たな変異株に対するコロナウイルスワクチンの効果検証にも急遽取り掛かった。現在、ファイザーとモデルナの研究者を含め世界中から数十チームが参加し、検証を急いでいる。

ワクチンの効果は「下がる」可能性

彼らが検証結果を確認できるまでは早くても2週間はかかる。しかし、オミクロン株が示している変異の状況からは、ワクチンの効果が、これまでに発見された変異株に対するものよりも、程度は不明ながらもいくらか低いものになる可能性が高いことが示唆されている。

「ほかの変異株や、その他の変異について行ってきた多くの研究に基づけば、これらの変異が抗体中和を相当程度低下させるとの強い確信を持つことができる」と、ブルーム氏は見る。

南アフリカの医者たちは、すでに新型コロナに感染し、回復した人々の間で再感染が拡大する様子を確認しており、この変異株が自然免疫を圧倒し得ることを示唆している、とクワズールー・ナタール大学の感染症担当医師のリチャード・レッセルズ氏は話す。

オミクロン株には、スパイクでの30種を含め、約50の変異があります。スパイクとは、ウイルスの表面を覆うウイルスタンパク質で、ワクチンはスパイクを認識し、攻撃するよう人体に覚え込ませる働きをする。

このような突然変異のいくつかは、以前にも観察されていた。ワクチンを回避するベータ変異株の能力を強めたと考察されたものもあれば、デルタ株に極端な感染力を与えた可能性が高いものもあった。

南アフリカの国立伝染病研究所のウイルス専門家であるペニー・ムーア氏は、新たな変異株について「私の考えでは、これは両方の要素を併せ持っている」と話す。

オミクロン株に対するワクチン効果の試験は、ムーア氏のチームがおそらく最先端である。同チームは、抗体を得ている人々から採取した血液を、合成したオミクロン変異株でテストする準備を進めている。

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