「オミクロン株」科学者たちが強く懸念する理由 これまでにない早さで研究が始まっている
こうした「疑似ウイルス」(すべての変異を含むウイルスの代用品)の作成には時間がかかる、結果は約10日で出てくる可能性がある。
人々がさらされる可能性が高いウイルスをより厳密に模倣するため、ウイルス専門家であるアレックス・シガル氏が別途率いるアフリカ健康研究所のチームは、生きたオミクロン株を培養し、抗体を獲得した人々と、過去の罹患履歴を持つ人々の血液でテストしようとしている。
これらの結果が出るまでには、さらに時間がかかる可能性があるものの、ワクチン効果の全容がわかるだろうとシガル氏は見る。
新ワクチン「100日以内には第一便出荷できる」
これによって、ワクチンがオミクロン株に対してあまり効果がないことが証明されれば、ワクチンの有効性を上げるための調整が必要かもしれない。最悪の事態に備え、モデルナ、ファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソンの各社は、人工のオミクロン株でワクチンに対する試験を計画している。
特にモデルナとファイザーのmRNAワクチンは、即座に修正が可能なテクノロジーで製造されている。ファイザーの科学者は「(免疫システムを逃れた)エスケープ変異株の場合、6週間以内に現在のワクチンを適応し、100日以内に第一便を出荷できる」と、同社のスポークスパーソン、ジェリカ・ピッツ氏は言う。
モデルナの作業は、科学者がオミクロン株を知った直後の23日に始まった。これは、同社がこれまでの変異株対応で最も速い、とモデルナ社長のスティーブン・ホーゲ氏は語る。
オミクロン株まん延のデータがなくても、ワクチンには手ごわい脅威となることは明らかだと、同博士は言う。
「この株は、最大の襲撃をすべてフランケンシュタインみたいにつなぎ合わせたものだ」と、同変異株で多く懸念されている変異についてこう表現する。「すべてが警戒に値するものだ」。モデルナは、現在のワクチンを約2カ月で更新し、必要に応じて臨床結果は約3カ月で得られるとしている。
また、両社は、ブースター接種が新型の変異株をかわすのに十分な免疫システムを強化するかどうか検査予定だ。ファイザーとモデルナのワクチンは、抗体レベルを大幅に引き上げることが示されている。
ロックフェラー大学(ニューヨーク)の免疫学者ミシェル・ヌッセンツヴァイク氏は、「しかし、これらの抗体は、すべてのウイルスの反復に対して広く有効という訳ではなく、オミクロン株を完全に中和するには不十分である可能性があります」と述べている。
ヌッセンツヴァイク氏らは、ジョンソン・エンド・ジョンソン社やアストラゼネカ社のワクチンに加えて、mRNAワクチンに対してもオミクロン株を試験する準備をしている。1カ月以内に結果が出ることを期待している。