SFの世界が現実に、JR西「人型ロボット」のド迫力 日本信号やベンチャーと共同開発の「汎用機」

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零式人機には足がないが、コックピットに座った操縦者は足も動かしていた。零式人機の腰に当たる部分の動作を行うのだという。よく見ると操縦者が履いているブーツは市販のスキー靴だ。「ありものの組み合わせで造りました」と、人機一体・開発部スタッフの中村太一氏が笑う。

コックピットで「零式人機」を動かすスタッフ(記者撮影)

実演を食い入るように見つめていた日本信号の徳渕良孝常勤監査役に感想を聞いてみたら、「私も操縦席に座って動かしてみたいなあ」という返事が返ってきた。子供の頃に思い描いていたロボットの操縦が今、目の前で実現しているのだ。

現在のモデルは「完成度でいえば8合目」(中村氏)。とはいえ、残りの2合は困難を極めそうだ。まだ鉄道の現場における作業を行ったことはないため、人間のように繊細で複雑な作業ができるかは未知数だ。また、屋外での作業ともなれば防水、防塵対策を施す必要がある。そもそも、零式人機は高所作業を行う重機として開発されており、実用化の際には軌陸車などの作業用車両に搭載されることになるが、車両に載せて作業するには今のモデルはやや大きすぎる。

そのため、現在はもう少し小型化した屋外仕様の「零式人機 ver.2.0」を開発中だという。「幅を1.3m程度に抑えるとともに重量も軽くしたい」(中村氏)。2021年度中にver.2.0を完成させ、その性能を十分に確認した上で屋外の鉄道現場での実証実験を行ってどこまで機能するかを検証し、そこでの知見を取り入れた後に製品化モデルの開発に乗り出すというのが、今後のスケジュールだ。

人材難に悩むJR西が名乗り

人機一体は2007年に設立された。当初の社名は「マン・マシン・シナジー・エフェクタズ」。日本語に直せば「人間と機械の相乗効果」という意味で、零式人機のコンセプトは創業当初から示されていた。2015年に現在の社名に変更した。

その後、エイベックス系のファンドなどが出資し研究開発が軌道に乗り、さらに同社の技術を事業化するために手を組める会社を探していたところ、JR西日本が名乗りを上げた。

その頃、JR西日本は線路や高架など鉄道インフラの点検・保守作業を行う人材確保に悩んでいた。近畿エリアでは日々100カ所以上で、およそ1500人の社員や建設会社作業員が保守作業に従事しているという。こうした作業は終電から始発までの夜間の限られた時間に行われるが、線路保守に従事する作業者は年々減少しており、働きやすい環境の整備を喫緊の課題と位置付けている。

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