SFの世界が現実に、JR西「人型ロボット」のド迫力 日本信号やベンチャーと共同開発の「汎用機」

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同社では終電時刻を繰り上げ、1日の作業時間を拡大することでしのいでいるが、将来はそれだけではまかないきれない可能性もある。作業を少人数で実施可能とする機械の導入や新規開発にも取り組んできたが、そんな折に人機一体の技術力と出会った。

重労働で危険な高所における保守作業を機械に置き換えることができる可能性があるという点で、人機一体とJR西日本の思惑が一致した。ベンチャー企業に投資を行う同社の子会社・JR西日本イノベーションズが2020年5〜6月に人機一体に対して出資を行うとともに、JR西日本から社外取締役も派遣した。

高所作業を実演する「零式人機」(記者撮影)

さらに2021年3月には日本信号も開発に参加することが発表された。同社が得意とするフェールセーフ技術やセンサー技術が零式人機に取り入れられるが、それ以上に同社に期待されているのは、メーカーとして零式人機の事業化の道筋を付けることだ。JR西日本は日本信号と2016年に業務資本提携を締結し、同社に3%出資するとともに共同で鉄道の安全性の向上、工事・オペレーション、メンテナンスの効率化などに取り組んでいる。零式人機の事業化を託す相手として日本信号は大きな役割が期待されている。

「零式人機の開発への参加が決まったときには社内がざわついた」と、日本信号の社員が話す。日本信号は駅案内ロボットや自動清掃ロボットも手掛けており、実際の現場で活躍中。しかし、どちらも箱型でありロボットというよりは同社がこれまで開発してきた自動改札機や自動券売機の延長線上にあるともいえる。その意味で人間の形をした零式人機は明らかに「ロボット」だ。ロボット事業への本格的な進出に社内がざわついたもの当然だ。

「人型ロボット」でなく「人機」

日本信号の塚本英彦社長は「もの作りのノウハウがあるのは当社だけ」と胸を張る。今回のver.1.1は人機一体の工場で開発されたが、将来の実用化モデルの開発は日本信号が担うことになる。

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JR西日本はソフトバンクと組んで自動運転・隊列走行BRTの開発を行うなど、近年、外部リソースを活用した新技術導入に積極的だ。「今までは自前主義でやってきたが、技術的にも限界がありスピード感にも欠ける。今後は専門技術を持つ相手と共同で積極的に新技術を開発していきたい」と長谷川一明社長は意気込む。

一方で、人機一体の中村さんは「零式人機は汎用性があるので鉄道以外にも土木、建築などいろいろな分野への導入も考えられる」と話し、幅広い産業で零式人機が採用されることを夢見る。同社のモットーは「人型ロボットを造るのでなく、人機を造る」である。これまでのロボットといえば、ソフトバンクが開発した「ペッパー」のようにコミュニケーション用途のものや、自宅で使うおもちゃのようなものが主流だったが、人機一体が商用化されれば、現実世界は本格的なロボット時代を迎えることになる。鉄道の現場に実際に出て、人間が行っている作業をこなすことができるか。次のモデルの登場が楽しみだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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