終電繰り上げ「10分でも助かる」鉄道現場の叫び 十数分でも時間が増えれば「週休2日」可能に?

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終電後から始発までの限られた時間で行われるレールの交換作業(記者撮影)

全国の鉄道各社が相次いで打ち出している「終電の繰り上げ」。首都圏では9月上旬、JR東日本が2021年春のダイヤ改正で主に東京100km圏の終電を繰り上げると発表したのを皮切りに、私鉄各社も追随。東京メトロを含む関東の大手私鉄全社が、来春のダイヤ改正で終電の時刻を見直す。

コロナ禍による行動変容で深夜の利用客が大幅に減ったことも理由の1つだが、鉄道各社が大きな目的として掲げるのが「夜間の作業時間の確保」だ。線路をはじめとするインフラのメンテナンスは電車が走らない夜間に行わざるをえず、近年はホームドアの設置など設備の新設工事も増えている。終電時刻を繰り上げることによって作業時間を少しでも増やし、工事関係者の「働き方改革」につなげたいという狙いがある。

ただ、各社とも終電時刻が早まるのはおおむね10~30分。夜間の作業時間は短いとはいえ、10分程度の繰り上げでどれだけの効果が生まれるのだろうか。東京メトロの夜間作業の現場を見た。

深夜のレール交換作業

12月17日、午前1時の東京メトロ日比谷線東銀座駅(東京都中央区)。終電が走り去った後のホーム上には乗客の姿に代わり、これからトンネル内の工事現場に向かう作業員約30人がスタンバイしていた。この日行ったのは「分岐器レール交換工事」。電車の進路を変える、いわゆるポイントのレールを取り替える作業だ。

古いレールの撤去作業。レールを持ち上げて移動させる「山越器」と呼ばれる門型の装置を使って人力で行う(記者撮影)

平日の東銀座駅発の終電は、北千住方面が0時06分、中目黒方面が0時16分。だが、レールの交換などの作業は、全区間の運転が終了した後に架線の送電を止め、「線路閉鎖」をしてからでないと取り掛かれない。同線の最後の電車は中目黒0時45分着で、始発は5時00分。翌朝からの運行に支障がないよう、実際には始発よりも早く4時ごろまでに作業を終える必要がある。

レールの交換は、まず古いレールを枕木から外して撤去したうえで、資材の運搬などに使う「保守用車」で運んできた新しいレールを積み下ろして取り付ける。古いレールと枕木を固定する締結装置を外すのに約10分、撤去するのに約40分。その作業が終わるころ、新しいレールを積んだ保守用車が南千住駅(荒川区)近くの千住車両基地からやってくる。

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