「位置ゲー」はローカル線活性化の切り札になる スマホの『テクテクライフ』と釧網本線コラボ

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自分の行動記録を残せるという楽しみと、地図を塗る範囲を拡大するという征服感が『テクテクライフ』の魅力だ。この感覚は乗り鉄の楽しみ方「全国鉄道路線乗りつぶし」に似ている。スタンプラリー機能もあり、あらかじめ全国の鉄道駅がチェックインスポットとして登録されている。ネットでは「駅のスタンプを集めるうちに乗り鉄になっちゃった」という声もある。鉄道趣味との親和性が高いといえる。

「テクテク釧網本線めぐり」チェックポイントの画面(左)。チェックポイントになった理由や地名の由来などを表示し、アルバムページ(右)では獲得したチェックポイントの画像を一覧できる(画像:テクテクライフ提供)

ゲーム業界で『テクテクライフ』は「失敗したゲームをリニューアル復活した希有な事例」としても知られている。失敗したゲームとは、2018年11月にドワンゴが運営開始した『テクテクテクテク』だ。エグゼクティブプロデューサーは中村光一氏、プロデューサーの田村寛人氏とディレクターの麻野一哉氏はチュンソフトのサウンドノベル『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』を手がけたコンビ。3人とも名の知られたゲームの主力スタッフだったから、『テクテクテクテク』も話題となった。

実際の地図を使い、塗りつぶしつつ、モンスターを集め育てる。地図上に巨大ボスキャラとして「シン・ゴジラ」「ラスボスの小林幸子」が登場するなどで話題になった。ゲームのインフルエンサーとしても知られるタレントの伊集院光氏をはじめ、南海キャンディーズの山里亮太氏、おぎやはぎなどがラジオや雑誌で話題にした。

その追い風もあって、ユーザー数も順調に増えていたけれども、約7カ月でサービス終了となった。運営会社ドワンゴの親会社KADOKAWAからは「課金要素が少なく収益化に難があり、グループの経営不振の要因のひとつ」として挙げられた。まるで戦犯のような言われようだ。

ユーザー調査で見えた「失敗要因」

位置情報ゲームは2003年の『コロニーな生活』、2005年の『ケータイ国盗り合戦』を草分けとする分野で、2009年の『まちつく!』、2012年に世界的ヒットとなった『Ingress』(イングレス)と、そのシステムを使った2016年の『ポケモン GO』などのヒット作がある。2019年には『ドラゴンクエストウォーク』がスタートし、最近では『Pikmin Bloom』(ピクミン ブルーム)がはじまった。

こうした流れの中で、2018年の『テクテクテクテク』はドワンゴにとってもKADOKAWAにとっても期待の星だった。投資額も大きく、それだけに悔しさがにじみ出たといえる。しかし、制作者とユーザーのほうがもっと悔しかった。半年で終了は早すぎる。もう少し待てなかったのか。前述のタレントやユーザーの声援を受けて、田村氏と麻野氏は「枠組みを変えて復活させる。データも引き継ぐ」と宣言した。

サービス終了の翌月、2019年7月に麻野氏と田村氏は「テクテクライフ株式会社」を設立。2020年10月に新生『テクテクライフ』をリリースした。開発に当たって、前作の終了時に残っていた3.3万人以上のアクティブユーザーにアンケートを実施し、約5000人から回答を得た。その結果に、前作の失敗要因が見えた。

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