「位置ゲー」はローカル線活性化の切り札になる スマホの『テクテクライフ』と釧網本線コラボ

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このきっかけは『オホーツクに消ゆ』イベントだった。東京で堀井氏、荒井氏との連絡役を務めたゲームクリエイターの樋口浩路氏が『テクテクライフ』のユーザーで、制作会社とも懇意だった。このゲームにはスタンプラリー機能がある。活用すれば全国からゲームのファンが訪れるし、地元の人々も楽しめる。観光誘客に活かせるかもしれない。網走側のスタッフで市議会議員の近藤憲治氏に紹介した。

釧網本線とコラボイベントを実施している『テクテクライフ』」の画面(筆者撮影)

基本料金無料のゲームだから、近藤氏はまず自分で遊んでみた。鉄道ファンだけあって、地図の塗りつぶしの楽しさはすぐに理解できたようだ。「(話題のひとつとして)地域の店主などに話したところ、『コロナ禍で景気が低迷している。ぜひやってみたい』という声が多かった」(近藤氏)。

ゲームを開発、運営する「テクテクライフ株式会社」とオンライン会議で顔合わせし、網走と東京のリモート会議で合意。チェックポイント設定など、ほとんどの作業をオンラインで進めた。7月から網走市内で「テクテク網走めぐり」をスタートした。4月のオンライン初顔合わせから3カ月のキャンペーン開始というハイスピード。両者のオフライン初対面はサービスインの式典だった。

コラボレーションの効果はすぐに現れた。全国から『テクテクライフ』のユーザーが訪れた。商店や観光スポットにスマホを持った観光客が現れ、飲食、買い物、観光施設見学を楽しんでいる。「博物館網走監獄」「オホーツク流氷館」ではゲームユーザー向けに入館料を割引した。コロナ禍で冷え切った観光需要の復活をゲームが加速しているといえそうだ。

「テクテクライフ」どんなゲームか

一方、『テクテクライフ』のダウンロード数もコラボ開始から勢いが増した。課金ユーザーも増えているという。地域とゲーム開発社の双方に利点があった。この実績を元に「JR釧網本線維持活性化実行委員会」へ提案したところ、釧網本線全通90周年を盛り上げるイベントのひとつとして実施が決まった。キャンペーン開始は10月1日、前日の9月30日に緊急事態措置及びまん延防止等重点措置が終了したこともあり、「テクテク釧網本線めぐり」の滑り出しも順調だ。

『テクテクライフ』の画面。位置情報を使ってプレーヤーがいる街区を塗りつぶす(左)。住所の字をすべて塗るとボーナスポイントをもらえる(筆者撮影)

『テクテクライフ』は位置情報ゲームだ。画面に現実の地図が表示されており、スマホのGPS機能を使ってプレーヤーがいる街区(公道に囲まれた区画)を塗りつぶしていく。これがゲームの基本的な遊び方で、塗りつぶすたびに経験値が上がりレベルが上がる。レベルが10段階上がると塗りつぶす範囲が広くなる。字(住所地名)、町、市など一定の範囲を塗りつぶせばTTPというポイントが付与される。TTPは実際に移動した区画の隣接地を塗るために使う。

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