ホンダが「電気のバケツリレー」を仕組み化した訳 Jリーグ会場で見たフェーズフリーの現場感
秋晴れに恵まれた、山梨県甲府市のJIT リサイクルインク スタジアム。この地で、「平時と有事」の2つのフェーズをフリーとする考え方「フェーズフリー」を実感することができた。
「水素×スポーツ Day in 山梨」というイベントでのことである。
これは、2021年明治安田生命J2リーグ第39節「ヴァンフォーレ甲府 vs 松本山雅FC」(2021年11月14日)の開催に併せて、山梨県・トヨタ・ホンダなどが連携して実施したものだ。
会場では「Moving e(ムービングイー)」を活用して様々な電力供給が実施された。
Moving eとは、2020年8月に詳細が公開された「災害時の電力確保を目指し、移動式発電・給電システムを構築して電気を届ける」ことを使命とするシステム全体を指す。
大型発電機としての母船の役目をするのは、トヨタが東京都向けなどに約100台を納車した燃料電池バス「FCバス」の搭載水素量を約2倍に引き上げた「CHARGING STATION(チャージングステーション)」。ここから電気を取り出すのは、ホンダの「Power Exporter(パワーエクスポーター)」だ。
取り出した電気は、可搬型バッテリー「LiB-AID(リベイド)E500」や「モバイルパワーパック」など、小型の電池に振り分けられる。こうした一連の流れを、ホンダでは「電気のバケツリレー」と称している。
フェーズフリーとは何か?
台風や地震による災害時(有事)には、送電線がダメージを受け、通常の発送電が維持できなくなる事態が、これまで全国各地で発生している。
そうした場合に、太陽光発電で得た電気を水電解して水素とし、これを一旦、水素を燃料とする燃料電池バスに蓄え、燃料電池バスが被災地まで出向き、そこで電気のバケツリレーを行うという仕組みだ。
電力網のくくりとして、「グリッド」という表現があるが、Moving eは移動式マイクログリッドという位置付けである。
一方で、災害時(有事)のみの利用では、Moving eのシステム全体の維持コストがかかってしまう。また、災害が起こってから初めて使用すると、地方自治体や被災者などが「電気のバケツリレー」に慣れていないために、利活用がスムーズにできないことも考えられる。
そのため、平時でもMoving eを活用し、維持コストの平準化と住民向けの啓蒙活動を行うことが必要だ。これが、フェーズフリーという考え方である。
そうした中、水素・燃料電池関連産業の集積地「やまなし水素・燃料電池バレー」構想を掲げ、水素社会実現に向けて積極的な山梨県では、これまで県内で実施した防災訓練の場でMoving eを紹介しており、今回は平時での利活用の現場として、Jリーグとの協力を得た展示と訴求活動を実施することになった。
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