間違った情報を信じ込む人に決定的に欠ける視点 因果関係と相関関係、原因と結果をわかってない
偶然の相関関係は、一見関係のなさそうなもの同士の間でしばしば見つかります。たとえば、「1年間でプールで溺れる人の数」は「ニコラス・ケイジ主演映画の公開本数」とほぼ相関します。「アメリカにおけるチーズ消費量の増減」も、「ベッドシーツに絡まって死亡する人の増減」と恐ろしいほど一致します。
これらはナンセンスでファニーな相関関係ですが、「ただの偶然である」可能性を頭から排除してしまうと、まったく因果関係のない現象に強い結びつきを勝手に作り出してしまうこともあるので、注意が必要です。
② 「原因は1つ」という思い込み
因果関係と相関関係を混同する2つ目のケースは、「原因と結果の両方に影響を与える第3の要素を見落としていた」場合です。
先ほどの「コウノトリ神話」では、「広い屋根」という要素が見落とされていました。家が大きく屋根が広いから大家族が住み、広い屋根だからコウノトリが巣をたくさん作れる、つまり「大家族」と「コウノトリ」をつなぐ第3の存在「大きな屋根」がこの関係を解く鍵だったわけです。
2015年、オランダで行われた乳がん研究でこの「見落とし」が起き、人々の混乱を招きました。3万7000人の乳がん患者を対象にした研究で、乳房温存手術を選んだ患者(放射線療法を組み合わせることが多い)は、乳房切除術を選んだ患者より長生きする傾向があると判明すると、オランダ乳がん協会には心配した女性から問い合わせが殺到。「乳房切除術を選んだのは間違いだった?」「放射線療法を選ぶべきだった?」という心配の声が相次ぎました。
しかし、研究者たちはのちに「因果関係を発見したわけではない」と弁解しています。たとえば、ある患者に乳がん以外の病気もあれば(心臓病など)、乳房切除術が選ばれる可能性が高くなります。心臓病ですでに弱っている体では、過酷な放射線療法に耐えるのは難しいからです。
乳房切除の集団の生存率が低いのは、手術そのものが原因ではなく、そもそも「健康状態が悪かった」のが原因の可能性があるのです。
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