間違った情報を信じ込む人に決定的に欠ける視点 因果関係と相関関係、原因と結果をわかってない

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当然ながら、コウノトリは赤ちゃんを運びません。コウノトリと赤ちゃんの数の間には相関関係はありますが、因果関係はありません。

この現象を起こしているのは、「家のサイズ」。家が大きければ、そこに住む家族は大所帯、つまり子どもの数は多くなります。そして、この話はヨーロッパ由来で、大きな家にはたくさん煙突があります。コウノトリは煙突に巣を作るので、大きな家ほど巣の数も増える。結果、子だくさんの家族は大きな家に住み、屋根の煙突にはコウノトリが巣を作る。これがカラクリです。

こういった「つながりがあるように見える」現象から、実に多くの間違った結論や推論を私たちは生み出します。因果関係と勘違いしやすい相関関係は、大きく3つのタイプに分類することができます。

① ただの偶然

あるレシピ本に載っている50種類の食材を医学研究アーカイブ「PubMed」で調べたところ、うち40種類は1つかそれ以上の研究で「がんのリスクを高める」とも「がんのリスクを下げる」とも言われていました。たとえば、ある研究ではワインは体に良いとなっているのに、別の研究ではワインは飲まないほうがいいとされている、という具合です。

この矛盾を解くのが、「研究結果は、ただの偶然だった」可能性です。

2010年のサッカーW杯で話題になった予言ダコ・パウルを覚えているでしょうか? 対戦するチームの国旗が描かれた箱を2つ並べて餌を入れたところ、パウルが最初に餌を食べた箱の国が次の試合で必ず勝利し、8試合すべての勝敗を的中させたのです。

予言ダコとして世間を騒がせましたが、単に運がよかっただけだとしたら? 8試合すべての結果を的中させる確率は、コインを8回投げてすべて表になる確率と同じで256分の1、0.4%です。かなり低い確率ですが、ロトを当てる確率はこれよりも20万倍ほど低く、4500万回に1回です。

とはいえロトに必ず当選者がいるように、どんなものであっても、調べる対象や回数を増やせば何らかの結果に行き当たります。ただひたすら探し続ければ、たいてい何らかの関係が見つかるのです。つまり、ある食材を何度も調べると、「がんにいい」という結果になることもあれば、「悪い」結果が出ることもある、ということです。

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