30代女性が"夜逃げ"した「ヤバい格安賃貸」の正体 安心できる住まいが見つからない若者の窮状

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コロナ禍で仕事を失い、家賃を払えなくなり、賃貸アパートからの退去を余儀なくされた20代の男性も、住宅を宿泊施設に転用した脱法ドミトリーを転々としてきた。

日暮里にあるアパートには、2段ベッドと1段ベッドだけが置かれていた。また池袋にある一見普通の民家の中には、カーテンで仕切られた2~3畳のスペースが20人分ほどあった。宿泊施設のはずなのに、フロントらしき場所もスタッフもいなかったという。

男性は取材に対し「Booking.com(ブッキングドットコム)とかAirbnb(エアビーアンドビー)とかのサイトで普通に予約しました。どこもほとんど満室でしたよ。日本人の若者が多かったです」と語った。

神奈川県内の工場で派遣労働者として働いていた20代の男性の住まいは、派遣会社が用意した寮だった。寮付き派遣である。

居酒屋に転職し、住み込みで働いていたが…

しかし、努力して資格を取っても待遇に反映されないうえ、いつ雇い止めに遭うか分からない派遣労働では将来が描けないと、その後、居酒屋に転職。ただそこでも賃貸アパートを借りることができるだけの収入は得られず、店内に住み込みながら働いたという。

そこにコロナ禍が直撃。オーナーの一言で店は閉店となり、男性はホームレスとなった。2カ月間の路上生活の末、所持金が尽きた男性が新型コロナ災害緊急アクションに送ってきたメールには次のように書かれていた。

「仕事を探しながら面接などの前日だけネットカフェなどでシャワーだけ借りて、身だしなみを整えるような生活をしてきました。でも、住所なし、(料金未納で)携帯の通話もできないという状況なのでどこも雇ってくれません。就職に必要な履歴書や証明写真を買うお金すらなくなってしまいました。どうか助けてください」

男性は一時的に同アクションの支援などを受けた後、シェアハウスへと入居した。現在は再び派遣の仕事をしているという。男性はいまだかつて賃貸アパートで暮らしたことがない。

同じく派遣労働をしながら、友人の家でルームシェアしてきた20代の男性もいる。ルームシェアといっても「友達の家に転がり込んだというのが本当のところで、家賃も7対3くらいで友達が多く払っていました」という。

次第に居づらくなり、部屋を出たところでコロナ禍に遭遇。派遣の仕事も減ってしまい、ネットカフェや3畳ほどの広さの貸倉庫などを転々とした後に路上生活となった。現在は生活保護を利用しながら仕事を探している。

「賃貸アパートに入れるなら入りたいです。でも、問題はそれに見合った給料がもらえるかどうかですよね。本当はアパートを借りられるだけのちゃんとした仕事を見つけたい。でも、いつまでも生活保護のお世話になるわけにはいかないから、結局また派遣かな……」と男性は諦めたように話す。

どこまでいっても賃貸アパートは“高値の花”なのである。

(3日目第2回はコロナ禍で露呈「若者ホームレス」知られざる苦境

藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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