医師が教える「認知症の進行を抑える」最高の方法 絶対にやってはいけないNG介護も併せて紹介
症状にもよりますが、認知症の方が意識的に話し方を変えることは難しいでしょう。でも、介護をする側が「話し方のコツ」や「ポイント」を押さえて話すことはできます。
もちろん進行の度合いにもよりますが、介護者が話し方を変えれば、認知症の方の行動は少しずつでも変わります。そして、認知症の症状の進行も限りなくゆるやかにできるのです。中には介護者が話し方・接し方を変えることで、悪化が止まったケースもあります。こうなれば、介護も格段にラクになるでしょう。
ちょっと想像してみてください。あなたは、人波であふれかえる大通りで、急に目が見えなくなりました。そのうえ声も出ないのです。耳は聞こえるものの歩くこともままならず、しゃがみ込んでしまいました。
不安で、怖くて、わんわん泣きたい気持ち。なのに、自分ができるのは、少しでも目が見えないかと、一生懸命目をこすることだけ……。
そこに2人の人物が現れました。一人はやさしい声です。あなたの肩にそっと触れながら、「大丈夫ですか? 目が痛いのですか?」。あなたは「この人なら私を助けてくれる!」と安心し、問いに答えるべく、声が出せなくても懸命にうなずいて、窮状を伝えようとするでしょう。
もう一人は、身もすくむような怒号。「ちょっと! こんなところにうずくまったら邪魔! どっか行ってよ!」。その恐怖だけでなく、怒号の主を止めようともしない群衆の存在も感じて、冷たい孤独感も増すに違いありません。
認知症の進行を緩やかにする方法
お察しのように、「あなた」は認知症の方の状態を暗示しています。認知症の方は目が悪くなくても、人の表情を読むのが苦手。何か声を発しない人間は、無関心に感じます。また、自分の窮状を言語化するのも上手ではありません。
こんなとき、やさしい声と、困り事を救い上げる適切な声かけがあると、どれだけ心が落ち着くことでしょう。心が少しでも落ち着けば、不安や恐れからむやみやたらに暴れたり、取り乱したりすることもなくなります。
これは、程度の差こそあれ、認知症の方も同じだといえます。困っている状況から、介護者の適切な声かけによって救い出してもらうことで、不安に覆われていた心に落ち着きが戻り、その結果、少しずつかもしれませんが行動が変わるのです。
人としての尊厳を認めながら会話を交わし合うことで、認知症の進行はゆるやかになり、結果的には介護者の気持ちにもゆとりが生まれる。
四半世紀にわたり、認知症の方と介護者を見つめ続けてきた私は、そう確信しています。
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