「邪道コンサル」押し売りもいとわない悪質実態 補助金をエサに営業攻勢を仕掛ける会社も

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抱き合わせ販売も、補助金をエサにした営業も、それ自体は法律に違反しているわけではありません。「嫌なら断れば済む話じゃないか」という見方もあるでしょう。しかし私は、こうした「コンサルティングの押し売り」に危ういものを感じます。

本来コンサルティングは、企業経営に何がしか問題があり、自社では解決できないとき、外部専門家のコンサルタントに支援を求めるものです。企業に問題が存在しないのにコンサルタント側から企業に売り込むというのは、邪道です。

ここでコンサルタントは、次のように反論します。「問題がない会社に押し売りをしているわけではない。われわれは経営者に問題を気づかせてあげているのだ」「邪道だろうが何だろうが、われわれのコンサルティングのおかげで企業がよくなり、経営者が満足するなら、それでいいではないか」。本当にそうでしょうか。

コンサルを雇っても「経営力」は上がらない

優良企業とダメ企業の大きな分岐点は、「良い問題」を捉え、解決することができるかどうかです。「良い問題」というのは私の造語で、解決することによって、発生前よりも企業がより良い状態になるような問題です。

たとえば、ある商社で取引先が不渡手形を出したとします。営業担当者は貸し倒れ損失が出ないように対処しますが、うまく行っても元の状態に戻せるだけです。たいてい以前より悪い状態になるので、これは「悪い問題」です。

ただここで、営業担当者が与信管理ルールや取引先情報の収集・共有といった仕組みを抜本的に見直したらどうでしょうか。仮に今回は貸し倒れ損失が発生したとしても、長い目で見てこの商社にとって大きなプラスになります。問題発生前よりも良い状態になったので、「良い問題」です。

優良企業は、「良い問題」を捉え、解決することで、経営状態が良くなるだけでなく、自律的に経営改革を進める経営力がアップします。ダメ企業は「悪い問題」の対応に忙殺され、経営状態は悪いまま、経営力も低いままです。

優秀なコンサルタントを雇えば、たしかに問題は解決します。しかし、経営者が問題を発見・解決するプロセスを放棄し、コンサルタント任せにすると、一時的に経営状態は良くなっても、経営力は上がりません。

つまり、押し売りされたコンサルティングを導入しても、経営力が上がらず、長期的には企業は発展しません。本来なら経営者は、自ら問題を発見・解決するプロセスを実践し、側面からアドバイスを受けるためにコンサルタントを起用するべきなのです。

という話を知り合いのコンサルタントにしたところ、次のように反論されました。

「理屈はわかるけど、経営力を高めるって、そんなに簡単じゃない。経営力が低いダメ企業でも倒産しないように、われわれはもっともっと企業にいろんなコンサルティングを提案し、密着でサポートしてあげる必要があるんじゃないかな」

おそらく、今回取り上げた“自分の儲けファースト”のコンサルタントは少数派で、顧客の発展を第一に考え真摯に業務に取り組むコンサルタントが大半でしょう。ただ、前者が急増していることは間違いなく、企業側にはコンサルタントを見極める目が求められます。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。
Facebook:https://www.facebook.com/takeshi.hioki.10
公式サイト:https://www.hioki-takeshi.com/
 

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