「邪道コンサル」押し売りもいとわない悪質実態 補助金をエサに営業攻勢を仕掛ける会社も

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融資とコンサルティングの抱き合わせ販売は、N銀行の専売特許というわけではありません。いま全国の地方金融機関でちょっとしたブームになっています。その背景には、地方金融機関が進めてきた「リレーションシップバンキング(以下、リレバン)」があります。

地域経済の低迷などで地方金融機関の経営状態が悪化したことを受け、金融庁は2003年にリレバンを打ち出しました。リレバンは顧客との間で親密な関係を構築し、蓄積した顧客情報をもとに貸出などの金融サービスを提供しようというものです。このリレバンの進化系として、融資とコンサルティングの抱き合わせ販売が始まったようです。

補助金をエサにコンサルティングを売り込む

「御社の顧問税理士の長谷川先生(仮名)からご紹介をいただいた」というコンサルティング会社・M社の営業担当者から、小売業・T社の門田功一社長(仮名)は面談の依頼を受けました。長谷川氏に確認すると、「紹介したわけではないが、M社の社長とは昔からの知り合いだ」というので、会うことにしました。

訪問してきたM社の営業担当者は、挨拶もそこそこに門田社長に「事業再構築補助金」のコンサルティングを提案しました。事業再構築補助金とは、コロナ禍で売り上げが減少し、新規事業・業種転換・M&Aといった事業再構築に取り組もうとする中小企業を対象に、関連費用を補助する公的支援制度です。今年、導入されました。

「御社は新規事業の構想をお持ちのようで、これは事業再構築補助金の対象になります。当社のコンサルティングは、着手金ゼロ、無事に補助金を獲得したらその25%を成功報酬としていただく形なので、御社の費用負担は発生しません。事業計画書など書類の作成から申請まで作業・手続きをすべて私どもで行うので、社長のお手を煩わせることもありません」

どうやらM社は、長谷川氏からT社の損益状況や事業計画などの情報を入手し、T社の新規事業が事業再構築補助金の対象になると判断し、売り込んできたようです。門田社長は少し気持ちが揺らぎましたが、思わぬ形の売り込みを不快に感じ、提案を断りました。そして、M社に会社情報を流した長谷川氏に厳重に抗議しました。

いま全国の中小企業は、T社のように補助金のコンサルティングの売り込みを受けています。経済産業省が力を持った先の安倍政権は、ものづくり補助金・事業承継補助金など中小企業の支援政策を続々と導入・拡充しました。そこへ昨年からコロナ対策の政策支援が加わり、コンサルティング業界は「コロナバブル」と言われる活況です。コンサルティング会社はこの商機を逃すまいと、補助金をエサに営業攻勢を掛けているのです。

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