安倍長期政権へ「重厚」布陣で足固め 「早期解散は後退した」の声

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内閣改造は支持率を引き上げ、政権浮揚を図る狙いがある。しかし、民主党政権下では、内閣改造後、逆に支持率が低下するなど、期待通りにいかなかったケースも少なくない。

安倍内閣の支持率は最近でも50%を上回っている。集団的自衛権行使容認や原発再稼働など国論を二分する懸案事項が表面化すると40%台に低下することもあったが、直近では持ち直し傾向を示し、発足後1年8カ月を経た政権としては異例の高い支持率を維持している。

「株価と支持率にこれほど神経質な政権はない」(与党筋)──。支持率低下の要因分析をしながら、こまめに軌道修正を行うち密さが功を奏しているという。

今回の内閣改造・役員人事でも「支持率は一時的には多少上がるだろう」(伊藤氏)との声も聞かれた。

年内解散遠のく、今の安倍内閣は「平時」

女性や若手を幹事長に抜てきする「サプライズ人事」は見送られ、党内融和が優先されたことで、早期解散は遠のいたとの観測が、政界関係者の間で急速に広がっている。

「サプライズ人事」なら、そう遠くない時期の衆院解散・総選挙の可能性もあるとみていた伊藤惇夫氏は「当分、安倍首相の視野に解散は入っていないと言える」と指摘。解散時期については、来秋の自民党総裁選前の通常国会終盤が最も高いと見通した。

飯島勲・内閣官房参与は2日のBS番組で「谷垣氏は乱世には向かないイメージがある。平時の谷垣。考えようによっては、今の安倍内閣は平時だ」と語った。

もっとも、年内は、苦戦が伝えられる福島県知事選と沖縄県知事選、消費増税の判断など厳しい政治環境が控えている。

有馬氏は、拉致被害者が戻ってくる以外に支持率が上がる要因は乏しいと指摘。「抜き打ちで、集団的自衛権行使と消費税率10%を国民に問う」判断があってもおかしくなく、年内解散の可能性も残るとした。ただ、そのタイミングを見送れば、自民党総裁選前の来年7、8月ごろの可能性が高いと見通した。

内閣改造と役員人事同日実施で、権力の掌握へ

今回の内閣改造では、党役員人事も同日に行ったことが注目された。通常は、党役員人事の翌日に内閣改造を行い、副大臣や政務官は党が官邸と調整しながら決定する。このケースでは、党に裁量余地が残る。

しかし、今回は内閣改造と党役員人事を同日に行って、党の人事も含めてすべて安倍首相が主導する意思を示したとも言える。

改造後も盤石な体制を整え、安倍政権は、年末の消費増税の判断や来春の統一地方選を乗り切り、長期政権への歩みを着実に進めようとしている、との見方が早くも永田町でささやかれている。

 

(吉川裕子 石田仁志 編集:田巻一彦)

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