乾汽船の乾社長が新中計の概要を説明、「これからは『往復びんた』を増やさないといけない」
中・小型バラ積み船が主体の海運会社、乾汽船の乾新悟社長が「東洋経済オンライン」のインタビューに応じ、新中計の概要を明らかにした。乾社長は2001年に33歳で社長に就任、現在もなお42歳と上場海運会社の中ではとりわけ若手だ。
新中計の数値目標は以下の通り。船隊規模の拡大で、緩やかながらも確実に増収増益を達成していこう、という意図が背景にある。
09年度実績 10年度計画 11年度計画 12年度計画
売上高 149億円 175億円 200億円 230億円
営業利益 14億円 19億円 22億円 26億円
経常利益 15億円 19億円 21億円 25億円
最終利益 10億円 11億円 12億円 15億円
ROE 4.58% 4.86% 5.45% 6.06%
前提となる為替や燃料油価格は以下の通り。感応度は10年度(今2011年3月期)ベースで、為替が1円円高で7000万円の減益要因、燃料油が1ドル上昇で350万円の減益要因。
09年度実績 10年度 11年度 12年度
為替 1ドル= 93.28円 90円 90円 90円
燃料油1トン= 417ドル 550ドル 550ドル 550ドル
運賃市況の前提は以下の通り。中小型船のハンディマックス、小型船のスモールハンディともほとんど変わらない前提だ。
10年度計画 11年度計画 12年度計画
スモールハンディ 1.35万ドル 1.4万ドル 1.45万ドル
ハンディマックス − 1.7万ドル 1.7万ドル
支配船腹の前提は以下の通り。10年度から14年度の5年間で180億円を投資する計画で、新造船3隻を含む6隻の33型バラ積み船(載貨重量3.3万ドルの中小型貨物船)を船隊に加える。下表で「他社用船」とあるのは、竣工した船を他社にいったん売却した後にリースバックするもの。「自社船」は竣工した船を自社で保有し管理・運航するものだ。
事業年度 設備投資の内容
10年度 2.89万トン1隻(他社用船)
11年度 2.4万トン1隻(他社用船)
同 3.3万トン1隻(自社船)
13年度 3.3万トン1隻(自社船)
14年度 3.3万トン1隻(自社船)
積極的な設備投資により、12年度をメドに30隻体制とする。30隻体制をメドとするのは、乾汽船の現在の船舶管理能力の上限が30隻だということのほか、「30隻あれば顧客の要望に応じたポジションに船が出せる。船の振り回しが効いてくる」と乾社長は運航効率の向上を理由に挙げる。
09年度 10年度 11年度 12年度
社用船 15隻 16隻 17隻 18隻
長期用船 7隻 7隻 8隻 7隻
中短期用船 2隻 3隻 4隻 5隻
支配船腹計 24隻 26隻 29隻 30隻
北米航路4割、南北航路4割の配船を、中期的には北米3割、南北5割に持っていく計画だ。「世界の工場が北にあり、大資源国が南にある。南北航路を増やすことで、環境問題となっているバラスト航海(海水などを重石代わりに積んで行う)が減らせる。10年前までは空腹(あきばら)で二酸化炭素を撒き散らしてニュージーランドに行き、材木を積んで日本に帰ってきていた。これからは環境のためにも『往復びんた』(往路も復路も荷物を積んで航海すること)を増やさないといけない」(乾社長)。
荷物の主力は、現在「麦・穀物」が35%、次いで石炭が20%、非鉄とセメントが各15%、材木が10%、鋼材が5%だが、「インドネシアから日本への石炭輸送が増えて、鋼材・非鉄・セメントも若干増える一方、材木や麦・穀物が落ちる」と乾社長は言う。オーストラリアの山元(採掘会社)との交渉上、「ロシアから日本への石炭輸送も行っている」(乾社長)というからしたたかだ。
麦・穀物 35%→減る
材木 10%→減る
セメント 15%→若干増
非鉄 15%→若干増
石炭 20%→伸ばす
鋼材 5%→若干増
船齢20歳以上というのが珍しくない海運業界にあって、乾汽船の強みは下記の通り、船齢が所有船で11歳、用船で6歳、全体で平均9歳と若いこと。
所有船 用船
隻数 16隻 9隻
載貨重量 49.8万トン 31.3万トン
船型 ハンディサイズ ハンディサイズ
ハンディマックス
船齢 11歳 6歳
「船舶の法定耐用年数は15年だが、物理的には20年以上。海外の荷主には『若すぎてもったいない』と言われるが、日本の荷主は安全運航や環境保全の意識が高い」(乾社長)ことから、若い船隊維持は必要だという。「乾汽船のバラ積み船は若い割には借金が少ない船。08年度、09年度にかなりメンテナンスもしている」と乾社長は胸を張る。
(山田 雄一郎 =東洋経済オンライン)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益
連本2010.03 14,868 1,399 1,484 983
連本2011.03予 19,500 2,700 2,650 1,600
連本2012.03予 21,500 3,500 3,450 2,100
連中2009.09 6,744 486 477 391
連中2010.09予 10,000 1,700 1,700 1,000
-----------------------------------------------------------
1株益¥ 1株配¥
連本2010.03 33.4 10
連本2011.03予 54.4 10-12
連本2012.03予 71.4 10-14
連中2009.09 13.3 0
連中2010.09予 34.0 0
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