ANA、訪日客獲得へ新会社がテイクオフ H.I.Sと国内旅行商品の合弁設立へ
一方で、「日本には観光面で各地方にすばらしい素材がたくさんある。たとえば、外国人からは『瀬戸内海はヨーロッパの地中海に匹敵する内海なのに、なぜアピールしないのか』と指摘されるほどだ」(ANAセールスの白水社長)。
治安がよく、食べ物の安心度が高い。山や海の豊富な自然、文化遺産など、日本の地方観光をアピールすることで、海外から日本の国際空港に飛んできた外国人旅行客が、さらに地方へと乗り継いでいく需要を開拓できる余地はある。
目下の訪日需要は好調だ。日本政府観光局(JNTO)によると、今年7月の訪日外国人は前年同月比26%増の126万9700人(推計値)と、単月ベースで過去最高だった今年4月の123万1000人を上回った。「団体旅行から個人旅行にシフトしてきている側面もある」(深木氏)。
今年4月、羽田空港で国際線が大幅に増便となった効果も大きい。その波を最も受けているのが、従来の10路線13便から17路線23便へと増やしたANAでもある。
なぜこの組み合わせだったのか
新会社発表の会見後、H.I.Sの平林社長に「JALと組んでもいいはずなのに、なぜANAとの合弁なのか」と聞くと、「そこは詳しく話せない」との回答だった。それでは、と「ANAから航空券を有利な条件で卸売りしてもらえるのか」と尋ねたところ、「それも答えられない」。ただし、平林社長は否定しなかった。
話を総合すれば、ANAは新会社向けに卸売りする国内航空券について、それなりの条件をH.I.S側に提示しているとみられる。ANAとしては、海外からの旅行客を国内線に乗せられれば、搭乗率の向上につながるし、ブランドの認知を含めた将来的な需要喚起にもなる。そのために多少踏み込んだ条件で航空券をH.I.Sに卸したとしても、割に合うという算段なのだろう。
地方の自治体や観光関連業者などと連携して魅力的な商品を設計できるかが、新会社の今後を占うカギとなりそうだ。
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