親の介護は「自宅」と「施設」のどちらにすべきか 「お金」や「時間」など、ここが選ぶ際の決め手だ

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福祉施設の「ケアハウス(軽費老人ホーム)」は、一般型と介護型(特定施設入居者生活介護)の2つのタイプがあります。一般型は、入居後に介護が必要になったらサ高住と同様、自身で居宅介護サービスを利用します。介護型では、施設に常駐する介護職員から24時間体制で介護サービスが受けられます。施設によっては要介護1〜3までとしているところもあり、要介護が重くなると退去しなければならないケースがあることも知っておきましょう。多くは、看取りにも対応していません。

このほか、大浴場やレクリエーションのエリアなどを充実させたシニアマンションもあります。アクティブなシニアなら快適に過ごせそうですが、介護が必要になったら、介護保険の居宅サービスを利用するか、介護付き有料老人ホームに転居することになります。

親が元気なうちに介護について相談しておく

メットライフ生命の「老後を変える全国47都道府県大調査」(2021年6月、20〜70代の男女に調査)によると、「家族には迷惑をかけたくない」という人が男性では53%、女性では65%にのぼり、「施設に入って介護してもらいたい」は男性35%、女性45%です。「自宅で介護してもらいたい」は男性で10%、女性で9%となっており、施設を希望する人が上回っています。

一方、厚生労働省の調査では、「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたい」、「家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい」という人が、施設で介護を受けたい人を上回っています。

個人差もありますから、家族がどんな介護を受けたいか、日頃から話し合っておくことが大切ですが、介護について家族で話し合っている人は全体の13%にすぎず、話し合いをしたことがない人が67%に上ります。60〜70代でも、話し合いをしているのは18%です(メットライフ生命の調査より)。前述のように、要介護度が軽いうちに利用できる施設では、要介護が重くなると退去しなければならないケースもあります。自宅から施設に転居し、さらに別の施設に転居、となると、費用もかさみますから、その点も考慮しておかなければなりません。

自宅で過ごしたい、自宅で過ごさせたい、という気持ちが強い人も多いと思いますが、「家族には迷惑をかけたくない」という人が少なくないことも念頭におき、さまざまな選択肢を検討してみましょう。介護のために子世代が退職する「介護離職」は、できる限り避けたいものです。人生100年時代にはキャリアを築いて、なるべく長く働くことが重要であり、介護離職は子世代の人生に大きな負担になるからです。親が元気なうちに、どんな施設があるかを知る、費用が工面できるかをチェックする、家族で話し合って本人と家族の意向を確認する、ということが重要です。

井戸 美枝 ファイナンシャルプランナー

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いど みえ / Mie Ido

神戸市生まれ。 関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエントフライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)、『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)、『現役女子のおカネ計画』(時事通信社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)『親の終活、夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)など著書多数(ホームページ​経済エッセイスト井戸美枝FBページ)。

 

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