エースばかりを集めた夢のチームに失敗が多い訳 組織力を決めるのは他者への心理的安全性にある

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人間とニワトリは違うから、このような考察には意味がないとする批判もあるだろう。しかし、こうした警告は、古くは、子どもの利他性と公共性を徹底的に鍛えたスパルタの思想に見ることができる。プラトンもまた著書『国家』の中で、利己的な人物(=スーパー・チキン)がリーダーに選ばれないよう、リーダーが家族や私有財産を持つことを禁じようと提言した。近代では、ダーウィンが、著書『人間の由来』(1859年)の中で、次のように述べている。

過去には評価されなかった人材が脚光を浴びる?

道徳性の高さは、特定の一個人やその子どもたちを、同じ部族の他のメンバーに比べて、ほとんど、あるいは全く有利にするものではないが、道徳の水準が上がり、そのような性質を備えた人物の数が増えれば、その部族が他の部族に対して非常に有利になるだろうということは忘れてはならない。

愛国心、忠誠、従順、勇気、そして共感の感情をより高く保持していて、たがいに助け合ったり、全員の利益のために自分を犠牲にする用意のあるような人物をたくさん擁している部族が、他の部族に打ち勝つだろうことは間違いない。そして、これは自然淘汰である。いつの時代にも、世界のどこでも、ある部族が他の部族に置き換わってきた。そして、道徳は彼らの成功の一要因なので、世界のどこでも道徳の標準は向上し、よりよい道徳を身につけた人間の数が増加したのである。(『人間の由来』

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もちろん、HRテックが進歩する速度は早い。組織レベルでのパフォーマンスと、組織メンバーの特性に対して統計分析(重回帰分析)が自動で行われ、利他性のような特性の重要性が広く認識されるまで、そう時間はかからない。だから、いちいち心配しなくても、スーパー・チキンが不当に高く評価されるような時代は終わる。

人工知能技術を背景としたHRテックの発展はめざましく、それによって組織内における生産性は極限まで高まっていくだろう。それは組織内における人材配置の全体最適化であり、収益性を大幅に改善させるはずだ。過去には評価されなかった人材が脚光を浴びるようなことも起こるだろう。

酒井 穣 株式会社リクシス 取締役副社長CSO

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さかい じょう / Joe Sakai

1972年、東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。Tilburg 大学 TIAS School for Business and Society 経営学修士号(MBA)首席(The Best Student Award)取得。商社にて新事業開発、台湾向け精密機械の輸出営業などに従事後、オランダの精密機械メーカーにエンジニアとして転職し、オランダに約9年在住。帰国後はフリービット株式会社(東証一部)の取締役を経て、独立。複数社の顧問をしつつ、NPOカタリバ理事なども兼任する。主な著書に『新版 はじめての課長の教科書』(ディスカヴァー)、『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』(光文社新書)など。

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