エースばかりを集めた夢のチームに失敗が多い訳 組織力を決めるのは他者への心理的安全性にある

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コンサルティングの正解は「ケージ単位で生産性の高いニワトリを選別すること」である。組織(群れ)として生産性の高いケージを実現するニワトリは、利己性を抑制し、利他的に振る舞えるニワトリたちの組織である。こうしたニワトリは、お互いを搾取することなく、平和でストレスの少ない社会を形成する。それによって、社会全体のストレスと、喧嘩による無駄なエネルギー消費を減らし、組織全体として高い生産性を実現できるのだ。ミュアによる実験では、この選択によって、タマゴの生産性は数世代で160%も増加したのだという。

このミュアによる実験が示しているのは、生産性は個体レベルで測定するのではなく、組織レベルで測定する必要があるということだ。また個体レベルでは、利他性が生産性向上の鍵となる可能性も示しているだろう。生産活動というのは、一般に信じられている以上に社会的なものなのである。

意外と弱いだけでなく持続可能でさえない

拙著『リーダーシップ進化論』でも詳しく解説しているが、エースばかりを集めた「ドリームチーム」は、意外と弱いだけでなく、持続可能でさえない。それにも関わらず、組織の多くは、採用活動においてスーパー・チキンを求めている。人事評価においても、それぞれ個別に人事評価をしているのが一般的だ。さらに近年、HRテックが浸透し、スーパー・チキンの選別は、より正確かつ迅速に行えるようになった。しかし本当に、それでよいのだろうか。

この話を読んで、グーグルのプロジェクト・アリストテレスを想起した読者は鋭い。グーグルでは、アリストテレスによる「全体は部分の総和に勝る」という言葉に基づいて、チーム単位でのパフォーマンスを分析した(2012〜2016年)。その結果、チームのパフォーマンスを決めているのは、他者への共感を前提とした心理的安全性(psychological safety)であることがわかったのだ。

次ページ人間とニワトリは違うから、このような考察には意味がない?
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