ディズニーが赤字でも「強気の値上げ」に傾くわけ 苦境の経営陣がコロナ後に見据える戦略の転換

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値上げだけでなく、設備投資も進めてきた。22年4月には『トイ・ストーリー』がテーマの新ホテルを開業。シーでは23年開業を目指し、追加投資として過去最高額の2500億円を投じる新エリア「ファンタジースプリングス」が建設中だ。

国内で比較対象となるユニバーサル・スタジオ・ジャパンも毎年のように値上げを実施してきた。同施設も3月には任天堂と組んだ新エリアを開業。10月にはポケモンと戦略的アライアンスを結び、複数のプロジェクトが進行中であると発表している。このように、値上げの背景にはつねにキャパシティーと満足度を引き上げるための投資があった。

課題は日帰りリピーターとのバランス

ただし、値上げの余地はなお大きい。例えば米カリフォルニアのディズニーリゾートは1日最大159ドル(1パークの券、10歳以上)。日本円で1万8000円を超え、日本のディズニーの倍近い水準にある。

吉田社長は「パーク内だけでなく、ホテルも含めたリゾート全体で単価向上を考えることが大切」とも述べている。より長い期間の滞在を楽しむ客を中心とした、高付加価値型リゾートを目指すのかもしれない。

しかしながら、毎日のように訪れる熱心なリピーターが多く存在するのが日本のディズニーリゾートの強みでもある。バランスの取り方は重要な課題になる。

東京ディズニーランドが誕生して38年間。開発に投資し、入園者数を増やす。そのうえで料金を値上げし、さらに開発する、というサイクルは変わっていない。

今後は入園者数など規模を追わない経営にシフトするのだろうか。「さまざまな次の手を仕掛ける準備は整いつつある。守り一辺倒でなく、攻めの意識が浸透した」(吉田社長)。オリエンタルランドは今、重大な転換期を迎えているのかもしれない。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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