元日本代表・石川直宏が「農業」にのめり込むワケ サッカーと農業の意外な「共通点」とは何か

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石川さんは現役時代に何度も大きなケガを経験しながら、それを乗り越えてきた。そんな彼だからこそ、キャリアに悩むアスリートに伝えられることがある。それは、ともに活動する三橋さんも感じている。

「石川さんのように”トップ・トップ”を経験した選手は、キャリアに困ってないという先入観がある。でも本当はとても苦労されて、這いつくばってキャリアを歩んできた。だから石川さんの考えや経験を伝えることで、いろんな人の『先入観の壁』を壊したいですね」(三橋さん)

今後はプロジェクトの”体験価値”を向上

最近は、プロジェクトに関わるアスリートや団体が増えているという。東京ヴェルディの小池純輝選手が代表をつとめる社会貢献団体「一般社団法人F-connect」がその1つだ。

「サッカーも農業も、うまくいかない部分を自分の中で受け入れて、つぎにつなげることが大事」と石川さん(提供:PLAYMAKER)

同団体は、プロサッカー選手がつくる農地「エフコネファーム」を飯綱町で運営。児童養護施設の子どもたちが農業体験できる場所づくりを行うなかで、石川さんや三橋さんと情報交換や相互サポートなどの連携を図っている。

また、鹿島アントラーズの犬飼智也選手や元サッカー日本代表の増田誓志さんは、「NAO’s FARM」で実際に農業体験を行ったそうだ。

「ほかの競技のアスリートも来てくれたりして、いまは横のつながりが増えています。今後は、来てくれた人たちの体験価値をもっと高めていきたいです」(三橋さん)

集まってきてくれた人々に、どれだけの価値を提供できるか――。プロジェクトはこれから、”価値向上”のフェーズに入る。

「農業を通してつながった選手や元アスリートが、『自分も新しいチャレンジをしたい』って言ってくれるとうれしいですね」(石川さん)

石川さん自身は今後、農業で培った経験をサッカー界に”つなぐ”役割も果たしていく。

「農業だけでなく、いろんな活動を通して得た情報や経験をサッカー界につなげていく。それも自分の役割かなと思っています」(石川さん)

石川さんを基点に、あらゆる人が、あらゆるものがつながっていく。それは本職であるFC東京の活動でも同じだ。ファン・サポーターの心をつないでいた現役時代から変わることのない、彼の”生き様”なのかもしれない。

取材の最後、”農場長見習い”としての抱負を聞いてみた。

「りんごや白菜、野沢菜、お米も育ててみたいと思っています。いずれは、たくさんのアスリートと地域の方々、そして子どもたちが集まる農園にしたいです」(石川さん)

楽しそうにそう答えてくれた。現役時代から人々を魅了する、太陽のような笑顔で。

新妻 翔 フリーライター

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にいつま しょう / Sho Niitsuma

1990年生まれ。埼玉県出身・赤羽在住。立教大学社会学部現代文化学科卒業。2013年、金属業界専門の新聞社に入社し、広告営業を5年経験。2018年、インターネット広告代理店に転職し、約2年間フリーペーパーの広告営業に従事。2020年7月からフリーランスのライターとして活動。Twitter:@niitsu57

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