それでもマツダが「自動運転レベル0」と表する訳 2022年発売「異常時対応システム」の超技術

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今回の技術試作車には、車載センサーとしてルームミラーの前に3つの画像認識用カメラが搭載されている。前方100m強を認識するカメラから、3段階で広角に対応するものだ。

画像認識技術について、筆者は関連する半導体の設計を行う海外2カ国の企業・開発拠点を訪問しており、詳しい説明を受けている。この技術を、マツダは部品メーカー等と協力し、チューニングしているという。

そのほか、前後パンパー/ボディサイド/サイドミラー/ルーフに計9個のカメラ、前方向けに77GHz帯域のミリ波レーダー、車体四隅に24GHz帯域のミリ波レーダー、さらに車体周辺2~3mの範囲をカバーするソナー(超音波センサー)を装備する。

ルーフ両端に飛び出したセンサーが試作車らしさを物語る(写真:マツダ)

また、国が産学連携で開発した高精度3次元地図「ダイナミックマップ」の要件にあった地図情報を活用するなど、技術スペックでは自動運転レベル3以上に対応可能であることがわかった。

試験場内の別施設では、広島大学と共同研究する脳科学を用いたシステムの説明も受けた。これは、視線挙動からドライバーの異常予兆を検知するものだ。

試乗後に意見交換した、CO-PILOT CONCEPTの全体を取りまとめるマツダ商品戦略本部・主査の栃岡孝宏氏も、技術試作車内でエンジニアが「自動運転レベルゼロ」と表現したのと同じような見解で、「マツダとしては既存の自動運転レベルにこだわらない」という持論を述べた。

2022年、新型「MAZDA6」「CX-60」で市販化か?

自動運転レベルについては、運転の主体をドライバーであるとするレベル2までと、運転の主体がクルマのシステムに移行するレベル3との間に、技術面やコスト面での大きな壁があると言われて久しい。

そうした中、自動運転や先進運転支援に関する技術と法整備が着々と進み、メーカー間での「競争領域」が、単なるスペックや機能から「技術に裏付けされた企業としての理念」に移ったことを、今回の体験で強く感じた。

CO-PILOT CONCEPTは、2022年に「CO-PILOT 1.0」としてドライバーの異常検知や居眠り検知により、高速道路での路肩退避と一般道での路肩移動を含めた車線内減速停止機能を搭載して量産されるという。

体調急変や発作にも対応するシステムは高齢者ドライバーが増える中で活躍するだろう(写真:マツダ)

マツダがラージ商品群と呼ぶ、FR(後輪駆動車)をベースとする新型「MAZDA6」や「CX-60」から導入されるだろう。

また、2025年には次のバージョン(CO-PiLOT 2.0?)として車載センサーを増やしたうえでECU(制御システム)を新設し、前述した脳科学分野の知見も取り入れた進化型の量産を目指すとしている。高速道路と一般道で、非常停車帯退避を可能とする計画だ。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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