ダイドーが『呪術廻戦』で狙う缶コーヒー復権 『鬼滅の刃』缶の異次元ヒットを再現できるか

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今回の「呪術廻戦缶」のターゲットは20~30代の男性だ。「自動販売機で缶コーヒーを買うのは年齢層が高めの男性のため、少しでも若年層に訴求したい」と、ダイドーグループHDの広報担当者は意気込みを語る。

だが今のところ、「鬼滅缶」のような好調な滑り出しにはなっていない。10月25日に同社が発表した10月の国内飲料販売状況によると、コーヒー飲料の販売量は前期比で15%の減少となった。販売チャネル別に内訳を見ると、自販機での販売量は前期比6%減、コンビニなど小売りでの販売量は約3割減となった。

同社はこの数字を「昨年の『鬼滅缶』効果の反動」(広報担当者)と説明する。昨年10月を振り返ると、コーヒー飲料の販売量は単月で前期比5割増だった。コロナ禍による自販機の利用者減少などを受けて2020年1~9月が前期比1割減で推移していたことを考えると、「鬼滅缶」発売初月の同年10月の数字がいかに桁違いであったかがわかる。

その点、ダイドーが期待するのは『呪術廻戦』の劇場版公開だ。「『鬼滅缶』は発売と映画公開の時期が重なったこともあり、一気に話題となって売れた後、徐々に落ち着いた。今回は12月に『呪術廻戦』の映画上映が予定されていることもあり、年末にかけての長期戦と見ている」(同)。つまり尻上がりの展開を期待しているわけだ。

自販機の台数増が追い風

「鬼滅缶」ブーム時とは異なる追い風も吹いている。ダイドーの自販機台数の増加だ。

コロナ禍で外出機会が減り、職場や屋外での自販機利用者数が減少したことを受け、多くの飲料メーカーは不採算の自販機を撤収した。飲料業界の専門誌を発行する飲料総研によれば、2020年の清涼飲料市場は前年比で7%減だったが、その中でも自販機による売り上げは15%減となった。自販機の稼働台数も、前年から7万台減少し223万台となった。

このような状況下でダイドーは、他社が自販機を撤去した場所に新たに設置するなど、攻めの姿勢を見せている。昨年秋からの1年間で、「1万台には届かないが数千台」(広報担当者)増えたという。

飲料総研のデータでは、ダイドーの自販機は2020年末時点で約24万台。2019年までの数年は減少傾向にあったが、2020年は増加に転じた。この台数増も「呪術廻戦缶」を後押しする。ダイドーが自販機を増やす大きな理由は、同社の売上高の約8割を自販機での販売が支えていることにある。コンビニなどと違って販促費のかからない自販機販売は利益率が高い。

さらにコーヒー飲料は、売り上げ、販売数量ともに国内飲料事業の半分を占める主軸の商品だ。近年はコンビニコーヒーの台頭などで苦戦しているが、自販機での缶コーヒー販売は同社の生命線だ。

アニメとのコラボで、缶コーヒーの支持層若返りを目指すダイドー。目下、来年にコラボを組むアニメを選定しているところだが、缶コーヒーで採用するかどうかは未定だという。「呪術廻戦缶」の売れ行きが今後の戦略を左右しそうだ。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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