"12.9インチiPad"が注目されるワケ 「単にサイズが大きくなるだけ」のはずはない

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ホワイトのサイズイメージ(Macrumorsより)

この停滞は、iPadというアップルの1製品についての今後というよりも、タブレット端末という商品カテゴリが、どこまで適応範囲を広げながら成長できるか、その将来性を問われているのではないだろうか。

2012年末。ある雑誌で何人かの専門家が各分野の予測をするという企画があり、私自身も2ページほど受け持ったことがあった。この時、ノートPCからiPadへ、急激にモメンタムが変化しはじめた流れは、いつか揺り戻しがきて、道具としての”パソコン”は見直される時が来るのではと話した。残念ながら2013年という時間軸において、その予想は外れてしまったのだが、今の状況は当時予想していた状況に近い。

iPadは画期的な使いやすさ、操作時の応答性を持ち、その後のフォロワー(Androidタブレット)やタブレット型パソコン(Windowsタブレット)に対して「タブレット型端末とはかくあるべき」という姿を見せ続けてきた。

ではなぜ使いやすく、パフォーマンスが良いのか。操作にしても、機能にしても、シンプルだからに他ならない。クラウドと連動し、クラウドで提供されるサービスを、利用シナリオに沿って効率的に使うた道具がiPadだ。多数の”道具”を用意しておき、その道具を使いこなして結果を出すパソコン的なソフトウェアの作り方とは考え方が大きく異る。

シンプルさと創造性とのせめぎ合い

これまでのiPadは、機能を少しづつ肥大化させている面もあるが、基本的に複雑になり過ぎないことに強く配慮してきた。スマートフォンと同様のシンプルかつシナリオベースで軽快に使いこなせるからこそ、iPadには価値がある。言い換えれば、複雑なことをするのであれば、パソコンを使う方がずっと生産性が高くストレスとはない。

アップルはiPadに最適化したiWorkやiLifeを提供し、「iPadでも複雑なクリエイティブ性(創造性)を持たせることは可能なのだ」とアピールしてきた。しかし、iPadもパソコンに負けないぐら創造的なツールだ、というアップルの訴求に誰もが納得するかと言えば、そこまでの説得力はまだないというのが実際のところだろう。

シンプルでシナリオに沿うかたちで簡単に使いこなせるよう設計する、ということは、言い換えれば自由度や汎用性の面でパソコンほどの柔軟性は望めないことの裏返しでもある。この問題はどう解決されていくのだろうかと見守っていたが、今のところ、その答えを誰も見つけていないように思える。

アップルがiPadに12.9インチという大画面を搭載したモデルを用意し、企業向けソリューションとともに、よりプロフェッショナルな分野にもiPadを普及させていこうと思うならば、「パソコンのような創造性」を発揮できるものでなければ普及は進まないはずだ。

大画面化をいかにして生産性へ活かしていくのか。スマートフォンのスタイルを大画面に転換し、操作画面などのレイアウトを最適化することで生まれたiPadに、どこまで道具としての奥深さを盛り込めるか。機能ではなく、プラットフォームとしての可能性をどこまで深堀りできるかが注目点となるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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