中国主要メディアから「恒大」の文字が消えた理由

国民のパニック恐れる当局は問題を表向き黙殺

東莞市で建設途中の恒大集団のマンション群(写真:Gilles Sabrié/The New York Times)

中国の大手不動産開発会社・中国恒大集団に経営破綻の危機が迫る中、ソーシャルメディアには住宅購入者が抗議する様子を映し出す動画が大量にアップされている。政府のオンライン掲示板は不満と、政府による恒大集団救済を求める声であふれかえっている。

だが中国メディアのトップページからは、中国経済を脅かすこの問題を知ることはできない。

ここ数週間は、中国の主要国営メディアが「恒大」の名に言及することはほとんどなくなっているためだ。恒大問題は世界の金融市場を揺るがす要因となっているにもかかわらず、同社をめぐる最近のトラブルを報じているのは一握りの経済メディアにすぎない。

中国のネット空間で恒大危機に対する不安が飛び交うようになってから1カ月以上が経過した10月15日になって、中国の中央銀行はようやく「恒大」の社名を口にした。しかも、その内容は「状況はコントロール可能」と述べるにとどまるものだった。

「問題企業は救済しない」という暗黙の脅し

こうした情報空間の分断は、恒大問題に対する中国共産党の対処戦略が微妙なバランスの上に成り立っていることを示している。恒大集団は3000億ドル(約34兆円)の負債にあえぐ巨大不動産会社であり、その危機は大きすぎて完全には封じ込められない。同社の破綻懸念の広がりから中国の住宅市場は低迷し、経済全体に連鎖するおそれが出ている。

中国国家統計局は18日、不動産市場の冷え込みや電力不足などから、第3四半期の経済成長率が大幅に鈍化したと発表した。

一方で当局は、恒大危機が大きく報道されることで国民がパニックを起こす展開は何としても避けたい考えだ。また当局は、恒大問題について沈黙を守ることで、放漫経営に堕した企業経営者らに「自らの行動の報いを受けよ」というメッセージを送ることもできる。これは、民間セクターの統制強化に動いている中国指導部の方針に沿った動きだ。

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