中国主要メディアから「恒大」の文字が消えた理由 国民のパニック恐れる当局は問題を表向き黙殺

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声高にナショナリズムをあおる人民日報傘下のタブロイド紙「環球時報」は、「西側メディアは、中国のささいな問題を誇張して危機に仕立て上げるのがお好き」という見出しの記事を掲載し、こう書いた。

「違う、わが国は“リーマン・ショック”に直面しているわけではない」

今度は微妙に国民をなだめる戦略に

とはいえ、規制の網は粗い。ネット上には恒大のオフィスを占拠するデモ隊の画像が残っているし、ウェイボーでも「包囲される恒大本社」というハッシュタグのついた投稿が何百と見つかる。財新の記事はウィーチャットからは検閲によって削除されているが、財新のウェブサイトでは今も閲覧可能だ。

政府のオンライン掲示板には、「前金を支払ったマンションの建設工事はいつ再開されるのか」といった投稿が全国から書き込まれるようになっている。

中国のメディア事情を研究している香港中文大学の梁麗娟氏は、不満の表出をある程度認めることは一種の安全弁として機能すると指摘する。危機が制御不能になった場合に、抗議活動の巨大化を抑える効果が期待できるというわけだ。

「あらゆるものを封じ込めてしまうと、恒大問題が一気に大規模化したときに人々が現実を受け入れるのが難しくなる」(梁氏)

実際、恒大問題に対する国民の不安が高まり、住宅市場が不調となる中、当局のプロパガンダ戦略は、ここに来て再び微妙な変化を見せるようになっている。

9月下旬、中国の中央銀行は恒大の名を伏せたまま「住宅購入者の正当な権利と利益の保護」を約束する声明を発表し、人民日報がすぐさまこれを報じた。

そして15日には、中央銀行幹部が初めて恒大の社名に言及。金融市場局の鄒瀾局長は記者会見で、恒大がもたらすリスクは「コントロール可能」であり、全体としての不動産市場は健全だとコメント。止まっている建設は地方政府によって確実に再開されるようにすると述べた。

(執筆:Vivian Wang記者)
(C)2021 The New York Times

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